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コロナ禍で自由な時間が増えた井上さんは、子どものころから好きだった絵を描き始めた。「画家、朴正文先生に指導してもらい、パステル画を描いています」。チューリップを描いた作品が第54回新院展などの絵画展で2回受賞(最優秀文化賞ほか)するなど、早くも頭角を現している。「今年は歌の仕事が忙しくなって、絵を描く時間が取れないのが悩みです」 |
8月26日、デビュー40周年コンサート開催
(株)スタジオジブリのアニメーション映画「となりのトトロ」主題歌や「天空の城ラピュタ」エンディング曲でおなじみの歌手、井上あずみさん(58)が今年、デビュー40周年を迎えた。ジブリ映画の世界的な人気で、国内だけでなく欧米やアジアのイベントに招かれて歌うなど、国際的にも活躍している。アイドル歌手としてデビューしてもヒット曲が出ず10年間、アルバイトをしながら歌手を続けたという井上さん。「アイドルでは売れませんでしたがジブリの曲と出合い、長く歌い続けることができました」。26日のデビュー40周年記念コンサートは“ジブリソング”を特集して歌う。
「老若男女を問わず多くの人たちに“トトロの世界”を楽しんでもらいたい」—。井上さんは、なかのZERO 大ホールで開催する「井上あずみデビュー40周年記念コンサート〜Dearジブリ〜」を前に抱負を語る。「1部で新譜『ジブリ名曲セレクション Dear GHIBLI Ⅱ』からの曲を歌い、2部では『となりのトトロ』の世界を歌と語りでつづる『トトロ・イメージソングストーリー』を上演します。親・子・孫の3世代で楽しめるファミリーコンサートにしたいですね」
井上さんが、アニメ制作会社(株)スタジオジブリが制作したアニメ映画と最初に出合ったのは、「天空の城ラピュタ」(1986年)だった。レコード会社の人から「アニメ映画の歌い手を探しているよ」と教えてもらった井上さん。さっそく同映画の宮崎駿監督と高畑勲プロデューサ—に自分のデビュー曲とバラード曲を録音したテープを聞いてもらい、挿入歌「君をのせて」の歌唱に抜てきされる。次作「となりのトトロ」(88年)では、同映画のイメージソングアルバムを担当する作曲家、久石譲のスタジオにアルバイトが終わってから1カ月間通い詰め、デモテープ作成に参加させてもらうなど曲作りを手伝った。そうした努力が認められ、「『トトロ』をエンディング主題歌にしようという話になったとき、『あずみちゃん、歌ってみる?』という話になって…」。
「となりのトトロ」のほか、同作のオープニング主題歌「さんぽ」、挿入歌「おかあさん」「まいご」などを歌った。その後も、89年の「魔女の宅急便 ヴォーカルアルバム」に参加し、「めぐる季節」や「魔法のぬくもり」などの曲を歌唱。井上さんはジブリ映画での澄み切った歌声と確かな歌唱力で、その存在が知られるようになる。しかし、ジブリ映画と出合うまでは歌う場を求めて暗中模索の日々だった。
バイトと“兼業”
石川県金沢市生まれの井上さんは子どものころから歌うことが大好きで、テレビの音楽番組「家族そろって歌合戦」に出場。同オーディション番組「君こそスターだ!」や、決勝大会に出場した「スター誕生!」では不合格だったが、歌を習っていた作曲家の紹介で高校卒業後の83年、18歳でシングル曲「スターストーム」を出し、アイドル歌手としてデビューを果たす。
しかし当時は、松田聖子や中森明菜らが大活躍するアイドル歌手の全盛時代。キラ星のような人気歌手と比べると、井上さんら「83年デビュー組」への注目度はいまひとつで、井上さんのデビュー曲もヒットしなかった。
井上さんは、親からの仕送りとアルバイトで生活しながら歌手活動を続けた。「当時の時給は650円程度でしたね。喫茶店のウエートレスや書店の店員、広告代理店の事務などいろんな仕事をしました」。どんな仕事でも熱心に働く井上さんを見て、「社員にならないか」と誘われることもあった。また、2時間ドラマに出演したりもしたが結局、歌手を続ける気持ちの方が強かった。そんなときにジブリ映画で歌うチャンスに巡り合えた。「もし、私がアイドルとして少しでも売れていたら、多くのアイドル歌手と同じように短命に終わっていたかもしれません。今では、アイドルになれなかったからこそ長く歌い続けてこられたのかな、と思っています」
ただ、ジブリの曲で知られるようになったものの新曲に恵まれず、アルバイトを続けながら歌う生活は変わらなかった。そんな井上さんが歌手一本で生活できるようになったのは、93年に「井上あずみファミリーコンサート」と題した家族向けのコンサートを始めてから。デビューから10年がたっていた。「多いときは全国の都市を、年に80〜100カ所回りました」。同コンサートではジブリ映画の曲のほか、NHKみんなのうたテーマ曲「ハーモニー」、ピーターラビット公式イメージソング「キミが大好き」などを歌い、ファミリーソングを代表する歌手として幅広い世代から支持されるようになった。
さらに追い風となったのが、宮崎監督「千と千尋の神隠し」の2003年アカデミー賞でのアカデミー長編アニメ映画賞受賞。これを機に、世界でジブリ映画の人気が盛り上がったこと。ジブリ映画の曲を歌い続けてきた井上さんは、中国やフランス、イギリスなど世界の各都市で開かれるイベントに招かれて歌うようになった。
記念アルバムも
コロナ禍の3年間、ライブ活動はほとんどなくなったが、今年に入り国内外でのコンサート活動が再開。デビュー40周年記念アルバム「Dear GHIBLI Ⅱ」も発売になった。「久しぶりに歌えないつらさを味わい、引退という言葉も頭をよぎった」という井上さん。「人前で自分の曲を聞いてもらうことが歌手としての醍醐味(だいごみ)。デビュー40周年記念コンサートには多くの人に来てもらい、一緒に歌いたいですね」と意気込む。 |
♪井上あずみデビュー 40周年記念コンサート〜Dearジブリ〜
26日(土)午後5時半、なかのZERO(JR中野駅徒歩8分)大ホールで。
出演:井上あずみほか。全席指定。一般5000円、中学生以下2500円。3歳未満の子どもは大人1人につき1人まで、ひざ上鑑賞無料。
問い合わせは文化放送イベントインフォメーション Tel.03・5403・2626 |
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