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前橋の実家は和菓子やケーキ、パンなどを作ることを家業にしていたと木暮さん。小さなころから和菓子の材料、求肥(ぎゅうひ)で人の形を作っていた |
「古代蓮」との出合いがきっかけ
日本画や日本人形の絵付けに使われる顔料、胡粉(ごふん)を重ね塗りする独自の技法でハスをモチーフにした人形を制作している木暮照子さん(70)。「35年余り前、行田でごみ焼却場の建設現場に咲いたハスの花(古代蓮)を見て衝撃を受けました。それ以来、国内外を問わずハスの花が咲いている場所に出掛けては、人形を作っています」と話す。そんな木暮さんの個展、「木暮照子人形展」が14日(水)から行田市郷土博物館で開催される。18日(日)まで。
1947年、群馬県前橋市で生まれた木暮さん。80年に行田市に転居してまもなく「行田蓮(ぎょうだはす)」と出合い、ハスから得たイメージをもとに人形を作り続けている。
「古代蓮ともいわれる行田蓮は地中に眠っていた3000年〜1400年前の種が発芽して咲いたものです。ごみ焼却場の建設工事の際に土を掘り起こしたショベルの先がたまたま種の堅い殻を破り、亀裂が入ったことがきっかけで発芽したんです」と話す。行田蓮の発芽は種に亀裂が入るタイミングと土の温度、水などの環境がそろわないと難しいという。その“奇跡”のようなタイミングで咲いたハスを見て衝撃を受け、それがきっかけでハスをモチーフに人形作品を作ろうと思った。
そんな木暮さんの毎日はハスとともにある。7月から8月にかけてハスの花期を迎えると「日の出とともにハスの花を見に行きます。すると静寂な中で朝日に向かってハスの花が開いていくんです。まさに聖なる花という感じです」と話す。
「蓮池悠悠」第39回日本新工芸展(2017年) |
木暮さんの作る人形は気品が漂う表情の神秘的な女性像が多い。手彫りした桐(きり)の表面に胡粉を何度も重ねて塗り、磁器のような肌合いを出している。「表面の胡粉が乾燥して人形の顔などにヒビが入らないようにするため木に和紙をちぎってはっています。その上から胡粉を塗ると、湿度の変化を和紙が調整してくれるんです」と木暮さん。
貝殻の粉と混ぜるニカワの最適な比率や温度、湿度との関係は昔から口伝(くでん)により作家から作家へと伝えられたといわれる。木暮さんは夫の協力を得て、ハマグリやカキなどの貝殻を粉末にしてニカワと混ぜて作る胡粉を30年以上も自製しながら毎回データをとって研究し、良質の胡粉を追求してきた。今では、「人形の全身に胡粉を塗る作家は私だけだと思います」と話す。
95年の日展で作品「暁光」が初入選してから10回連続入選した実績を持つ木暮さん。14日から始まる個展では日展や日本新工芸展に出品した作品を中心に35点余りを展示する。 |
◆「蓮を讃える」木暮 照子人形展
14日(水)〜18日(日)、行田市郷土博物館(JR吹上駅からバス)で。
入館無料(常設展は有料)。問い合わせは木暮照子人形展事務局 Tel.048・556・6657 |
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