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  埼玉版 平成28年8月号  
「互いに学ぶ精神で」  教員OBらが「川口自主夜間中学」運営

現在、教えるスタッフは約25人。その4割が元教員だが、元社会人や現役の社会人、学生もいる。代表の金子さんは「教えたい意欲があれば、特に条件はありません」と話す。スタッフは常時募集中という
 市民が自主的に運営する「川口自主夜間中学」(金子和夫代表)には定年後の男女や10代の子どもたち、それに外国人など多彩な人が集まる。これまでさまざまな理由で勉強できなかった人、あるいは学校の勉強に追い付けなかった人など複雑な事情を持った人が多い。その人らを教える中心が小中学校や高校のOB教員ら。教える、教えてもらう—、その立場は違うが、両者にとって同自主夜間中学は互いの“学びの場”となっている。

生徒はシニアや不登校児、外国人…
 川口自主夜間中学は毎週火曜、金曜の午後6時半〜8時半に開校されている。場所は、かわぐち市民パートナーステーションと栄町公民館の2カ所。学費無料の同夜間中学で教える先生は全員がボランティアで、自宅から夜間中学まで通う交通費も“自腹”だ。

 それでも、先生らは川口自主夜間中学で教えることにやりがいを感じており、異口同音に次のように話す。「今までやってきた教員生活とは違う楽しさを感じています」、「一緒に勉強することが楽しい。だから続いている」、「どんな人でも勉強を続ければ必ず成長していく。そこに楽しさがあります」

 久喜市から週1回川口自主夜間中学へ教えに来ている副代表の木村義秋さん(67)は、現役のころは県内の高校で理科を教えていた。その木村さんは「川口自主夜間中学の生徒は学ぶことに意欲があり、吸収するスピードが早い」と言う。「義務教育の時に病気などいろんな理由で不登校となり、高校に進学しても勉強についていけず再び不登校になるケースもあります。ここに来るのはそんな日本人や日本語を学びたい外国人が多いですね」

 同夜間中学にはカリキュラムがなく、生徒は自分が学びたい教科を持ち寄って教えてもらうというスタイル。

 約40人いる生徒の約3割は日本人だが、残りは中国やブラジル、インドなどの外国人が占める。国籍も多様なら学習する目的も違う生徒をどう教えればいいのか—、と悩む先生らは月に1回勉強会を開いているという。教える中で生徒の歩んできた人生が見えてきて、逆に教えられることもしばしばだ。

宿題を喜ぶ女性
 自宅のある東松山市から週2回川口自主夜間中学に教えに来ている遠藤芳男さん(66)。今も忘れられないのは名前も書けないという女性のこと。遠藤さんより5、6歳下の女性だったが『名前を書ける?』と聞くと、うつむいてしまう。そこで名前を書くことから教え始めたが、週2回では勉強が思うように進まない。ある日、終業時間になったので「申し訳ないけどこれ宿題にするよ」と言うと、下を向いていた彼女が遠藤さんの顔を見上げて「宿題?」と目を輝かせた。その時、遠藤さんは「宿題といわれて自分は学校に来ていると実感でき、喜んでいるんだ」とピーンと来たという。

 この女性は10人きょうだいの一番上。貧しい家庭で、一番下の子どもを背負って登校していたが、子どもが泣くたび先生から教室の外に出されていた。次第に学校に行かなくなり、勉強の機会を失った。遠藤さんは「37年間の教員経験の中で宿題を出して喜ばれたのはこれが初めてだった」と話す。彼女はその後、約半年学んで文字が書けるようになり、自分の生い立ちを作文にまとめるまでになった。

 「川口自主夜間中学はスタッフの先生と生徒が互いに学び合う場だと思っています」と代表の金子さん(69)は言う。そのためにも生徒にはどうすれば理解してもらえるかと、教わる人に寄り添う姿勢が大切と考えている。

 金子さんが川口自主夜間中学を訪れたのは21年前。当時、現役の小学校教員だった金子さんは、そこである青年を見て驚いた。「その若者は28歳くらいで酒を飲んでいました。中学を出て植木職人をしていたのですが、初対面の私に『俺を教える奴はいないのか』と食って掛かるんですよ」。教えようとすると字は読めない、足し算、引き算も10本の指で数えるところまで、という状態。「本当にこういう人がいるんだ、と目の前に見せつけられた思いでした」と金子さん。その青年との出会いに強いショックを受け、今日まで川口自主夜間中学の運営に深く関わっていくことになった。

育英基金を設立
 そんな金子さんが最もうれしいのは、勉強の楽しさを知って人が成長していくこと。別の10代の青年は小学、中学の間不登校で川口自主夜間中学に来ていたが、ちょっとしたことで勉強に自信を持つようになり、その後高校、大学へと進学、今では立派な社会人になっているという。

 今、川口自主夜間中学で大きな問題になっているのは貧困。貧困が原因で教育が受けられない人が非常に増えている。ある中学生は高校受験に合格したものの、約20万円の入学金が支払えないために進学を諦めざるを得なかった。

 そこで金子さんは、そんな場合に支援できるようにと、これまで送られてきた支援金をもとに「川口自主夜間中学育英基金」を立ち上げた。今後、入学一時金が支払えない際に貸与するなどの支援を考えている。金子さんは、「これからも、一定のカリキュラムからはみ出してしまう人は必ずいる。そういう人たちを救う川口自主夜間中学の役割は変わらない」と話す。

 問い合わせは金子さん Tel.090・1843・1082

 今年、発足31年を迎えた川口自主夜間中学。これまでの歩みと教室に関わってきた生徒やスタッフの声を中心にまとめた本が近く発刊される。

 本のタイトルは、「月明かりの学舎から—川口自主夜間中学と設立運動30年の歩み—」(埼玉に夜間中学を作る会・川口自主夜間中学30周年誌刊行委員会編・東京シューレ出版・1944円)。

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