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かるた取りで認知症予防 「昭和郷愁かるた」を考案・かねこたかしさん |
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「みんなでかるたをしてよく笑い、頭を使い、しゃべってもらえばストレスも解消されるのでは」とかねこさん |
チャンバラやお手玉…子どものころ思い出す
70歳を過ぎたある日、運転していた車のラジオから、童謡を読んだかるたで遊ぶ高齢者の声が聞こえてきた。それがヒントになって「昭和郷愁かるた」を作ったのが上尾市のかねこたかしさん(73)だ。時間に余裕が生じるようになり、小学生のころの遊びや生活を思い出すようになっていたかねこさん。その時代をかるたにしたら、仲間と一緒に郷愁に浸ることができると考えた。完成後、かるたが回想法という認知症予防につながることを知った。「私の作ったかるたが健やかな老後に役立つのなら、この上ない喜びです」と話す。
1942(昭和17)年、現在の東京・大田区で生まれ育ったかねこさん。小学生だった49年〜55年(同24〜30年)は、日本が戦後復興にピリオドを打ち、「もはや戦後ではない」と言われた時期。朝鮮戦争をきっかけに高度経済成長が始まって間もないころで、人々は時代の高揚感に包まれていた。
かねこさんが作った「昭和郷愁かるた」には、その当時を知る人なら懐かしさを感じるさまざまな事柄—足踏みミシンや赤電話、街頭テレビ、金魚売り、姉さんかぶり、卓袱(ちゃぶ)台、アイスキャンデー、紙芝居など—が、50枚の絵札に描かれている。当時の雰囲気そのままの画家・柴慶忠さんが描いた絵は、見ているだけでほほえましい。
かるたを作るためにかねこさんは、まず自分がこの時期の「昭和」の何に郷愁を覚えるのか、と300程度の項目を羅列してみた。それをたたき台にして同世代の友人や知人にアンケートして50項目に絞り込み、文字札と絵札を作成。文字札の文句はかねこさんが考えたが、項目ごとの思い出を各人に書いてもらい、それを絵札の裏に記載した。それを読んでみると味わい深い。
かねこさんが小学生だったころの思い出を形にした「昭和郷愁かるた」。かねこさんは児童文学作家としても活躍。多くの著作を出している |
食事は一家がそろうもの
たとえば「君の名は」は、52年〜54年に放送され、番組が始まると銭湯の女湯から人がいなくなるという伝説が生まれるほどの人気だったNHK連続ラジオドラマ。
その文字札「女湯は真知子と春樹に乗っ取られ」に対し、43(同18)年生まれの男性は「忘却とは忘れ去ることなり。忘れえずして忘却を誓う心の悲しさよ—小4児には少々解り辛いナレーションだったが、いまだに忘却もなく残っている。映画も当たって真知子巻きが大流行。岸恵子にはなれないのに」とちょっぴり皮肉な郷愁談を寄せている。時代の幅を少し広げるために「ダッコちゃん」「太陽族」「タロ、ジロ」「ロカビリー」など昭和30年代の事柄も選んだ。
かねこさんはこの「昭和郷愁かるた」を1000セット制作し、協力してくれた友人や知人などに配ったところ、大きな反響を呼んだ。中でも、「昭和郷愁かるたは認知症予防に効果的」と指摘してくれたのが、日本回想療法学会の小林幹児会長だった。
かるたは普通「いろは」や「あいうえお」順に文字札の最初の1文字が始まる。かねこさんのかるたの場合、順番はランダムで、文字札で表現しているのと同じような絵を探して札を取り合う。このため普通のかるたより絵札のイメージに刺激されて、自らの体験記憶を想起させやすく、認知症が発症しにくいといわれる10歳〜15歳の記憶維持により効果があるという。
「当時の子どもの遊びはチャンバラ、お手玉、ままごと、缶蹴り、あや取りなど、みんなで一緒に楽しむもの、食事は一家がそろうものでした。すべてのことが、人と人との会話の中から始まっていました」とかねこさん。「かるたをしながら、それぞれが子どものころの思い出を語ってみると、その場が盛り上がって楽しさも倍増するのでは」と話す。
「昭和郷愁かるた」(1944円)の問い合わせは(株)豊島 Tel.03・3987・6361 |
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