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  埼玉版 平成28年3月号  
38年間、ボランティアで視覚障害者に読み聞かせ  草加市の本間美江さん

「朗読に関わったことで生き方についても多くを学んだ」と本間さん
随筆や腹話術などにも挑戦
 ボランティアグループの仲間と一緒に、草加市の広報紙「広報そうか」を視覚障害者向けに読んで38年になる草加市の本間美江さん(80)。長年、夫や娘の世話をする傍ら朗読のボランティア活動を続けてきた。生来、エネルギッシュな本間さんは、それ以外にも63歳から随筆サークル「ながつきの会」に入ってエッセーを書き始め、これまで本2冊を出版、放送大学を75歳で卒業している。「いくつになっても始めるのに遅いことはない」をモットーに、2年前から「人を笑わせたい」と腹話術を習っている。

 草加市に引っ越してきたばかりの38年前、「何かしたい」と思っていた本間さんの目に「広報そうか」に載った「朗読奉仕員募集」の文字が留まった。「これだ」と思い、さっそく講習を受けた本間さんは講習終了後「これで終わるのはもったいない」と、一緒に受講していた30代〜40代の女性約30人と朗読サークル「声」を立ち上げた。

 地域の情報を必要としている視覚障害者にとって、市の広報紙に掲載される情報は必要なもの。そのころ草加市内には200人以上の視覚障害者がいたとみられるが、家族が市の広報紙を読んでくれない人もおり、点字ができない視覚障害者にとっては朗読だけが頼りだった。

度々とり直し
 「待ってくれる人がいる」のは励みになったが、最初は思うように作業が進まなかった。市の広報紙に掲載された記事を音読したテープを視覚障害者に送ろうと自宅でラジカセに録音していると、電話やセールスなどのさまざまな雑音に邪魔され、とり直すこともしばしばだった。市の録音室を利用するようになってからでも、録音作業がなかなかはかどらず家族を犠牲にして録音室に缶詰めになることもあったという。


小学校での朝の朗読で(左が本間さん)
 うれしかったのは、録音した「広報そうか」がきっかけで勉強した人が晴れて鍼灸(しんきゅう)師になったと聞いた時。「うれしさも格別で、みんなで感激に浸ったものでした」と思い出す。途中、小学校での朝の朗読や図書の音訳など活動範囲を広げたりもした。こうして38年間朗読ボランティアを続けてきた本間さんは、2015年春の緑綬褒章を受章した。

 今も、朗読ボランティアを続けている本間さん。若手が定着しないためグループの高齢化は進み、現在60代〜70代が中心で、80代も3人いるという。「でも、声を出すことは体にいいようで、みんな元気です」とにこやかに話す。

 10歳になる前、終戦を満州(中国東北部)で迎え、一家で日本に引き揚げてきた本間さん。北海道南岸の、とある町に落ち着いたがまもなく両親が離婚、父と暮らすことになった本間さんは、働きながら夜間の高校に通った。職場で知り合った男性と心中未遂の末結婚したが、その後離婚。2度目の結婚で幸せをつかんで娘を授かり、3人の孫に恵まれた。42歳の時から家計を助けるために朝日新聞販売店で働き、18年間新聞配達をしたことも—。

エッセーが脳トレに
 草加市で38年間を過ごす間に朗読ボランティアのほかに随筆の執筆や放送大学で学んだりして、常に興味あることに取り組んできた本間さん。夫を7年前に見送ってから、始めたのが腹話術だった。「小さいころから人を笑わせるのが好きだった」と、川口市に住む腹話術師の喜多尾講子さんに学んでいる。

 本間さんは80歳になって、文章を書くことの重要性をあらためて感じている。100歳以上の長寿者が増える中で、「認知症にならずに健康長寿を生きるには脳トレが必要です」と話す。脳の前頭葉や海馬を使えば「最期まで心豊かな余生が送れるのでは」と、特にシニアに対して書くことを勧めている。

随筆サークル「ながつきの会」 会員募集
 本間さんが所属している随筆サークル「ながつきの会」(主宰・松本孝さん)では会員を募集している。

 同会は隔月1回、草加市・中央公民館で定例会を開いている。会員は事前にエッセー1編を書いて会に参加する。1999年に発足し現在、主宰者を含め10人が在籍。年会費1万5000円。入会金不要。入会希望者は本間さんに問い合わせを。Tel.048・924・5476

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