|
母から勧められ18歳から俳句を始めた辻さん。29年前に「童子社」をつくる。「俳句って、たのしい」(朝日文庫)など著書多数。元朝日新聞記者で、夫の安部さん(右)は弟子の一人 |
「俳句って、たのしい」—、俳句結社「童子社」を主宰する俳人の辻桃子さん(70)の持論だ。テレビでタレントが俳句を作る番組が人気になるなど、いま、ちまたではちょっとした俳句ブーム。「俳句は人生経験をたくさん積んだほうが豊かな作品を作り出せるんです」と辻さん。10年前から初心者を対象に始めた「『一からはじめる』俳句講座」(受講料無料)を2月7日から坂戸市で開講する。あなたも、五・七・五音の言葉遊びを始めてみませんか?
季語を含む五・七・五音からなる、世界で最も短い詩。その17音を、読む人それぞれのイメージで膨らませながら鑑賞していく俳句。子どもも作れて、気軽に入りやすい文学だ。
しかし、本気で俳句を学ぼうとしても、どうしたら上達できるのか分からない。入門書を買ってきて読んでも、それで俳句をすらすら作るまでには至らない。「水泳などと一緒で句会に出席して、実際に俳句を作ってみることが大事です」と「童子社」副主宰の安部元気さん(72)は話す。俳句を作り続けることが確実な上達法だという。
辻さんによると、俳句を始めると人生にとってさまざまな効用がある。それは具体的にどんなことなのか。
「まず、俳句を始めると退屈しません。定年になって何もすることがない、という人の生きがいになります」と辻さん。また、常に俳句の材料を探すようになるため、電車の中や街で人と待ち合わせている時でも人の動きに注意を払う。
特別な道具は必要ない。鉛筆と紙があればよいため、お金はほとんど掛からない。体力も使わないので不幸にして寝たきりになっても、俳句を作り続けることは可能だ。実際、「童子社」の会員にも「10年間寝たきりのおばあさんが毎月、良い句を送ってきてくれた」(辻さん)ケースがあるという。
自己実現を図る意味でも、句会などで自作の俳句を発表することで満足が得られる。その自作が仮に褒められたりでもするとうれしさも、またひとしお。もちろん、句会に参加することで人とのつながりができ、新しい友人関係に発展することも…。
俳誌「童子(どうじ)」 |
もう1人の自分になれる
江戸時代から続く句会では、投句→清記→選句という流れで行われ、各人が選んだ俳句が順番にみんなの前で発表される。多くの人から選ばれればうれしいし、選ばれなかったら悔しい思いもする。「童子」では選句だけでなく、出席者全員に「なぜ、自分はこの俳句を選んだのか」を説明してもらい、自己表現の気持ちをある程度満足させられるようにしている。
「それに、俳句のいいところはみんなが平等という点です」と辻さんは付け加える。句会では金持ちも貧乏人も、あるいは社長や年金生活者も同じ場所に会する。各人は俳号で呼び合い、俗世間での金力の違いや地位、名誉の高低は関係しないという。
でも、「親の介護や病気など、人は生きていると大変なことがたくさん。でも、俳句をやっていると俳号で呼ばれるもう一人の自分になれるので、客観的に自分を見ることもできるようになります」と安部さん。
「入るのは簡単だが、中は奥が深い」という俳句の世界。ためしに近所の句会をのぞいてみては—。
俳句の集まりという俳句結社の一つ、「童子社」は会員が全国的に約500人いる中規模の結社。その7割が女性で平均年齢は60歳代。地域ごとに5人〜20人規模の句会を設けており、その数は40を超える。埼玉では越谷と川越に句会がある。10年前から初心者向け「一からはじめる」俳句講座を開き、俳句の普及拡大に努めている。 |
「一からはじめる」俳句講座全6回 参加者募集
2月7日(日)午後2時〜4時、坂戸駅前集会施設(東武東上線坂戸駅徒歩2分)で。以後、毎月第1・第3日曜の同じ時間に行う。全6回。
講師は俳句結社「童子社」主宰の辻桃子氏と副主宰の安部元気氏。受講料無料。教材費3000円。対象は、これから俳句を始めたいと思っている一般の人。
同結社について詳しくは、ホームページ「童子吟社」で検索。
申し込みは塩野 Tel.およびファクス049・281・2842 |
|
| |
|