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これまでに「もう離婚しかない」というほどの夫婦の危機を50%以上修復につなげているという岡野さん。一方で、カウンセラーの育成にも熱心に取り組み、これまで約2000人を育てている |
年間22万組にも達する離婚。中でも注目されているのが熟年離婚だ。女性の意識の変化などから近年増加傾向にあるが、「最近は夫の定年後に突然、離婚を切り出す妻が増えているんです」と夫婦問題研究家の岡野あつこさん(61)は話す。これまでたくさんの相談を受けてきた岡野さんだが、「夫が考え方を少し改めるだけで解決できるのに、と思うケースも多い」という。これまで何十年も苦楽を共にしてきたはずの夫婦がなぜ、“第2の人生”途中で別れなければならないのか。「ある日突然…」を防ぐ方法について、岡野さんに聞いた。
夫婦の危機を防ぐには?
2016年3月に公開予定の映画「家族はつらいよ」。山田洋次監督が20年ぶりに喜劇映画のメガホンを取った話題作だ。結婚50年を迎えようとしている親の熟年離婚に大慌てする子どもたちを通して家族の姿が描かれている。
同映画で離婚を言い出したのは妻の方だったが、「熟年夫婦は妻が突然家を出て行き、いきなり離婚になることが多いんです」と岡野さんは話す。これまで24年間で約3万件の相談を受けて、熟年夫婦のいろんなケースを見てきた。
岡野さんは埼玉県春日部市出身で、浦和第一女子高、立命館大学を卒業。夫婦問題を研究するようになったのは36歳の時、夫の浮気で離婚したのがきっかけ。相談するところがなく、悔しい思いをしたからだった。
しかし、熟年夫婦の離婚理由には「夫に定年後も現役の時と同じ態度でいられること」というのが最も多い、という。「昼ごはんを作らなくてはいけないのが一番嫌、という奥さんは多いですね。また、結婚生活の間続いてきた夫の言葉の暴力や威圧的な態度にも嫌悪感を抱いています」と岡野さん。離婚を切り出された夫は、「えっ、なんで今ごろそんなことを言うの」と慌てふためく人がほとんど。「夫が現役のころは我慢し妥協してきたけれど、感謝されることもなかった」という不満が妻の心の中でくすぶっていることに、夫はまったく気付いていないからだ。
岡野あつこさんの近著「ある日突然妻がいなくなった〜聞こえていますか、妻の本音」(KKベストブック、1296円) |
感謝の気持ちを伝える
子どもが独立し夫の収入も定年退職後は年金などが主で経済力も衰えている。妻が子育てのため経済的に夫に依存していたころならともかく、そんな夫から今までと同じ態度を続けられると「もう、これ以上我慢できない」という心理状態になるようだ。
妻から離婚を切り出す背景には、離婚しない限り夫婦で築いてきた貯蓄や自宅などの所有財産のうち、自分の分を受け取れない、という事情もある。「権利として自分の分を勝ち取るために離婚するという人もいます」と岡野さんは話す。
夫にとっての離婚は経済的にもいいところはない。貯蓄などの資産は妻と分けた分だけ減るし、老後の生活の支えである年金は、2007年から離婚分割制度が始まったことで、離婚する妻に分割されるようになった。
夫にとってはなんとか避けたい熟年離婚。妻に離婚という気持ちを起こさせないためには、どうしたらいいのか。岡野さんは、「日ごろから奥さんの苦労をねぎらい、やさしく接することが大切です」とアドバイスする。妻の誕生日や結婚記念日など節目の日には、感謝の気持ちを表したプレゼントや一緒に旅行に行くなども効果的だという。
一方で、夫が変わらないからといって、いきなり離婚を言い出すこともどうか、と岡野さん。「夫が妻の気持ちに気付いてこれまでの態度を変えるためには半年から1年くらいの時間を見てあげてほしい。奥さんが今までずっと我慢してきたから夫も自分の態度の悪いところに気付きにくいんです」と夫にもチャンスを与えるべきだと話す。
仮に熟年離婚で夫との財産分割に成功したとしても、その後の長い老後を考えると妻も経済的には安心できないケースが多い。「だったら、夫に改めてもらった方がずっと効率的では」と数多くの熟年離婚を見てきた岡野さんは考えている。
ちなみに熟年離婚とは、同居期間が20年を超える夫婦の場合をいう。厚生労働省によると、1975年は6810組だったが、2007年には4万349組に増加、その高原状態は今も続いている。
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