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約2年間、NHK「日曜美術館」のキャスターを務めた千住明さん。「番組で取り上げたアーティストのほとんどが20代でやりたかったことを50代で始めていることに意を強くした」と話す |
作曲家および編曲家、音楽プロデューサーとしてポップスからオペラまで多岐にわたる分野で活動を続けている千住明さん(54)が今年、音楽活動30周年の節目を迎えた。それを記念して21日に開く渋谷のBunkamuraオーチャードホールの公演では、ゲストに兄で日本画家の博さん(57)、妹のバイオリニスト・真理子さん(53)が出演、15年ぶりに“千住3きょうだい”の共演が実現する。明さんは今後、音楽活動の軸を「ドラマなどのメーンテーマの曲作りからオペラなどに移していく」と考えている。「今回の演奏会はこれまでの活動の集大成になる」と意気込んでいる。
“千住3きょうだい”共演
音楽活動30年を記念する今回のコンサート。名古屋は終了したが、8日は大阪、21日には東京で公演が行われる。これらコンサートは2部構成になっており、第1部が大河ドラマ「風林火山」や「流星ワゴン」などドラマや映画、アニメのメーンテーマ曲の演奏、第2部が開催都市ごとに異なる多彩なゲストとの共演と盛りだくさんな内容。中でも注目されるのが東京での千住3きょうだいの共演だ。
明さん作曲のバイオリン協奏曲「リターン・トゥ・ザ・フォレスト」を妹の真理子さんが弾くのに合わせ、兄の博さんがプロジェクションマッピングを使い、映像で参加するという趣向。この曲は15年前、父が亡くなった時に演奏されたという。
今回はオーチャードホールの壁に立体的な映像を映し出し、曲に合わせてその映像が動き出すという。「現場でしか味わえないことが起こるのでは」と明さんも今から楽しみにしている。
父が高名な大学教授という家庭で育った3きょうだい。幼いころ、父から「将来何になっても構わないから、自分が熱中できることを探しなさい。ただし、何があっても手は貸さないよ」と教えられたという。後に教育評論家になった母は、そんな3人に同志のように接しながら、時に一緒に考えてくれ、ヒントを与えてくれたという。
長じて、3人は日本画家、作曲家、バイオリニストと独自の道を歩むことになった。今まではみんな自分のことで精いっぱいで、「ほかのきょうだいが何をやっているのか関心が薄かった」と明さんは話す。独立性を重んじる3人だけに、一緒に何かをやるようなことは嫌いで、15年前にジョイントコンサートを開いたきり、共演は一度もなかった。
母の死で心境変化
そんな3きょうだいの心境に変化が生じたのは、13年に母が亡くなってからのこと。その前に父が亡くなっていたため3人は、お互いを父や母のような目で見るようになったという。「母の死を機に肩の力が抜けたような感じになった。そんな時期に開かれる私の30周年コンサートだからこそ、3人でやろう、ということになった」と明さん。
東京藝術大学作曲科を卒業し、同大学院を首席で修了。修了作品「EDEN」(89年)は史上8人目の同大学買い上げとなり、同大学美術館(芸術資料館)に永久保存されている。
歌手・大貫妙子の「アフリカ動物パズルメーンテーマ」のアレンジでプロの音楽家としてデビューして以来、ドラマや映画、アニメなどのメーンテーマ曲を作ることを活動の中心に取り組んできた。依頼された映像作品のイメージにマッチしたテーマ曲を作る「オーダー作家」として、これまで発表した曲数は約2000曲を数える。その曲作りはまさに職人芸。「ここ10年ぐらいは、タイトルや主演俳優などから想像して、このドラマならこんな曲、と分かるようになった」と明さん。それは、オーダーメードで服を作るのと全く同じやり方だという。
30年は修業期間
30周年という節目を迎え明さんは、これまでの音楽活動に一区切りを付け、これからは「オペラを中心にやっていきたい」と抱負を語る。今まで数曲のオペラを書いているが、「グランド・オペラといわれている本格的なオペラを書きたい」という思いだ。14年に発表したオペラ「滝の白糸」に「すごく手応えを感じる」と、自信を深めている。
そのためのアイデアは、オーダー作家として発表した約2000曲の2、3倍にもなるという未発表曲も含め、豊富にストックされている。「これまでの30年は自分にとっての修業期間だった。当初からやりたかったオペラが今、やっとできるような環境になってきた」と意欲を燃やす。 |
活動30周年 千住明個展コンサート2015 with Orchestra
21日(水)午後7時、Bunkamuraオーチャードホール(JR渋谷駅徒歩7分)で。
作曲・編曲・指揮:千住明、ゲスト:千住博(映像)、千住真理子(バイオリン)、若林顕(ピアノ)、演奏:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団、全席指定S席9500円、A席8000円、B席6000円。
キョードー東京 Tel.0570・550・799 |
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