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  埼玉版 平成27年7月号  
空き家を防いで町を守る  一般社団法人「埼玉いえ・まち再生会議」

東京のベッドタウンとして発展してきた浦和の町を眺める浅子さん(右)と小山さん
 「私たちは、ごく一般の定年を迎えた人たちが生活や家をどうするのか、そばに寄り添って解決していくことを目的にしています」と話すのは、一般社団法人「埼玉いえ・まち再生会議」理事長の浅子進さん(71)。戦後の物不足、特に住宅不足から一転、人口減少などにより空き家が目立つようになっている昨今。5月末に空き家対策特別措置法が施行され「空き家」問題が注目される中、同会議では、メンテナンスと暮らしのサポートを通じ、高齢者が築いた住宅を社会の大切な資産として若い世代に継承する活動に力を入れている。

高齢者の住まいと暮らしを支援
 浅子さんは浦和市(現・さいたま市浦和区)職員の頃から、主に再開発事業を担当。最後はさいたま市都市局長として浦和駅前の市街地整備やさいたま新都心の整備など大規模プロジェクトに携わってきた。

 そんな経歴の浅子さんが、定年後関わることになったのが「埼玉いえ・まち再生会議」の活動だった。

 高校の後輩で同会議の理事、小山祐司さん(69)から声を掛けられたのがきっかけで同会議に入った浅子さん。「住宅は個人の資産であると同時に景観をつくる資産でもあり、町の財産。個人が暮らし方や使い方に困っているなら、町や社会と折り合う活用法を一緒に考えていきたいと思った」。浅子さんが相談者から話を聞くと、さまざまな悩みを知ることができた。

 例えば、高齢者の住まい相談。高齢者の住宅には「電灯がつかない」「水道が漏れる」「鍵が掛からない」など、修理が必要なことが多い。また、知らない業者から「あなたの家の屋根がおかしいですよ」「外壁を直す必要がありますよ」などと指摘されて不安を抱く人もいる。住まいだけでなく、食器の片付けや庭の草取り、書棚や洋服の整理、買い物や通院の手伝いなど、毎日の暮らしで困っているケースも。

 戦後の核家族化で近年、高齢者の夫婦や独居が増えている。それに伴い、高齢者の住まいの問題や暮らしのサポートなどを適切な価格で提供できるシステムづくりが必要、と浅子さんらは分かってきた。


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看護サポート
住まいの相談事に対応
 こで、地元の工務店や不動産、建設・住宅設備機器、畳店、塗装・防水、大工などを賛助会員として組織化し、2014年4月から高齢者の住まいや暮らしに関するさまざまなニーズに応えるサービスを始めた。

 相談者は1回500円の相談料で相談すると、同会は認定した相談員を派遣し屋根や外壁を診断、賛助会員の職人が実費で修理したり、生活面では同会に登録している主婦が時間給で手伝うという。

 さらに、高齢者の住み替えや住んでいた中古住宅を再生して若い世代などに売却、あるいは賃貸し住宅資産として継承させることも行っている。現在まで、すでにさいたま市を中心に150件程度の相談に応じている。

 同会は2008年に発足。当時の福田康夫首相が「200年住宅」を提唱したころ、日本の住宅に問題意識を持つ市民や行政(国・県・市)、学者、設計者、工務店、不動産、行政書士、弁護士、看護師による10人の研究会としてスタートした。

 その一人が浦和で工務店を経営していた小山さんだ。仕事上、(1)年金生活の高齢者は長年住んでいた自宅をメンテナンスする場合、お金をあまりかけられない(2)住めなくなったら、子どもに住んでもらうのか、売却するのか—という問題と日々接していたからだ。

 倒壊の恐れや衛生上の問題があると見られる空き家について、自治体が撤去や修繕などを所有者に命令できる「空き家対策特別措置法」がこのほど施行された。

 しかし、小山さんは「地元の相談者に地元の職人が迅速に対応することで、高齢者の住まいを守ることができる。それが空き家を防ぎ、町を守ることにもつながる」と話す。

 これまでに同会の相談者(顧客)は120人おり、これに対してメンテナンスなどを行う賛助会員(職人)は27人、同会正会員(研究会メンバー)が35人いる。

 「人口が減少している中、住宅産業のパイは増えない。そんな時代にもやるべきことはある。各地でわれわれのような動きが広がってほしい」と浅子さんらは願っている。同会のホームページは「埼玉いえ・まち再生会議」で検索。

 問い合わせはTel・Fax.048・789・7381

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