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  埼玉版 平成27年3月号  
ユネスコ無形文化遺産に登録  紙すきの町の職人たち

「作業中、頭から紙の厚さのことが離れません」と久保さん。紙すきの条件は1枚ごとに違うため、簀桁(すけた)を揺する回数も変わってくるという
小川町、東秩父村の細川紙と古来の技法
 2014年11月に国連教育科学文化機関(ユネスコ)無形文化遺産に手すき和紙技術で石州半紙(島根県)、本美濃紙(岐阜県)とともに登録されたのが、小川町(比企郡)と東秩父村(秩父郡)で生産している細川紙だ。県中西部に位置し隣接している2つの町村は、約1300年前から続くといわれる“紙すきの町”。古くからの製法を受け継ぐ3人の職人を同地に訪ねた。

 その昔、江戸時代には人口100万を超えたといわれる江戸。その大消費地に和紙を供給する一大拠点として栄えたのが小川町を中心とした地域だった。当時の栄華ぶりを伝えるのが「ぴっかり千両」という言葉。和紙を天日干しするのに適している冬の晴天の日は、千両もうかるという意味だ。今ではその名残は、ほとんど見当たらないが、紙すきの技術は人から人へと連綿と続いている。

 小川町で「久保昌太郎和紙工房」を営む久保晴夫さん(66)。創業者から数えて4代目に当たる久保さんの紙すき作業は朝7時半から始まる。大正初期に建てられたという建屋の所々に、先人たちの知恵が生かされていると話す。「作業場が南向きなのもそう。紙をすきながら時々、外に目をやって桜が咲いたなとか気分転換を図っているから1日8時間も同じ姿勢で作業できるんです」と久保さん。


紙すきを始めて20年になる谷野さん。それでも元気な先輩が多くて「最年少の工房長といわれています」と笑う。大学生の息子にも紙すきの技術を伝えようとしている
 紙すき工房の家の次男に生まれ、2年間だけ会社に勤めたが家業を継ぐことになって45年という久保さん。「もともと小川和紙(細川紙)は、無名の職人が作って障子紙など庶民の生活の中で消費される和紙として親しまれてきました。実用に徹して飾りがなく、手作りでも価格は廉価というのが特徴です」と話す。しかし、近代に入ってからの機械すきで作った和紙や洋紙の台頭で、最盛期には小川町周辺で800軒を超えていたといわれる手すき和紙業も激減、今では数えるほどしか残っていない。

 そして今、ユネスコ無形文化遺産への登録は関係者を勇気づける一方で懸念される事態も生じている。ユネスコに登録されたのは小川和紙の中でも重要無形文化財の「細川紙」。その小川和紙全体の中でも国内産コウゾが原料で、コストが高く生産性が低い特殊な和紙がユネスコ登録後、新規注文が増え供給が追いつかないという。「これまでずっと細川紙を使ってくれた人に待ってもらうことになり、ほかの紙に切り替えられることもあるのでは」と久保さん。

 長年続いてきた流通体系が壊れることを危惧しつつ暖房が置かれていない真冬の作業場で久保さんは、1日置きに夕方まで作業場に立つ。


「六枚双のびょうぶをつなぐちょうつがいも堅い紙で作っています」と鷹野さん
「紙すき技術広めたい」
 「日本には和紙の産地がたくさんあります。今回、細川紙がユネスコ無形文化遺産に登録されましたが、個人的には日本全体の手すき和紙技術が評価されたと思っています」と小川町の埼玉伝統工芸会館和紙工房長、谷野ひろこさん(56)は言う。同館和紙工房では和紙の実演見学と紙すき体験ができ、学校などからの見学者が増えている。

 兵庫県神戸市生まれで東京の会社でシステム開発の仕事に従事していた谷野さん。支店ができるのを機に埼玉へたびたび行くようになり、和紙作りに魅力を感じて約20年前に隣のときがわ町(比企郡)に家を建て夫婦で引っ越してきた。

 現在、和紙工房「手漉き和紙 たにの」で紙をすきながら同館工房長として小川和紙の普及に努める。「いい紙を残すことも大切ですが、実際に見ていただいて世間に紙すき技術を広めることも大事なことだと思っています」と話す。

 県内唯一の村、東秩父村は小川町と隣接した静かな村。紙すき見学と体験ができる「和紙の里」と道路を挟んで位置しているのが「紙工房 たかの」。ここは細川紙技術者協会会長の鷹野禎三さん(80)が運営する紙すき和紙工房だ。鷹野さんは「東秩父では(手すき和紙をやっている工房は)3軒に減った」と話す。和紙工房の収益が圧迫される中、跡継ぎがいなくなった手すき和紙工房が一つ、また一つと消えているからだ。

 洋紙との競争にさらされる一方で、原料のコウゾは大幅に値上がりしている。鷹野さんの工房で作っている国立博物館などに納める高級和紙は国産のコウゾが原料で、コストは高く、手間もかかる。しかし、「それを作る技術があるから細川紙が文化財として認められているんです」と鷹野さん。手すき和紙職人のジレンマは続く。

特別展「細川紙」ユネスコ無形文化遺産登録記念 —和紙の可能性—
 3日(火)〜29日(日)午前9時半〜午後5時、埼玉伝統工芸会館(東武東上線・JR八高線小川町駅からバス)で。入館料大人(高校生以上)300円、小人(小・中学生)150円。月曜休館。道の駅「おがわまち」併設。
 問い合わせ Tel.0493・72・1220

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