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「店内でお客さん同士が談笑するのを見ていると、店をやってよかったと思います」と松井さん=「三陸の台所・越喜来や」で |
復興居酒屋「三陸の台所・越喜来や」開く
「東日本大震災の被災地のために何か自分にできることはないか」という思いから志木市で復興居酒屋「三陸の台所・越喜来(おきらい)や」を約2年前に始めた松井邦子さん(54)。三陸でとれた新鮮な海の幸を食べられる、と地元の人たちや三陸関係者の間で評判を呼んでいる。また、昨年から「地元漁師のお母さんたちと交流してもらおう」と始めたバスツアーも好評で11月には4回目を予定。松井さんは交流を通じて、「まだまだ険しい復興の現状を知ってほしい」と話す。
松井さんは、復興居酒屋「越喜来や」をオープンする前、飲食業など店舗経営の経験はまったくなかった。そんな松井さんが居酒屋を始めることになったのは、息子の小中学校での友人が東日本大震災による津波に巻き込まれて亡くなり、友人の両親から「娘が大好きだった越喜来(岩手県大船渡市三陸町越喜来)へ一度足を運んで下さい」と言われたことがきっかけだった。
震災後1年の越喜来で目にしたのは、なかなか復興が進まない現地の状況。漁業の再開が難しかった越喜来の人たちを見て、「自分にできることはないか」と思ったのだった。
その後、三陸の海の幸を産直販売している「三陸とれたて市場」代表の八木健一郎さん(37)と出会い、松井さんは自分にできることを見つける。
「三陸とりたて市場」を通じて“被災地に仕事を作って雇用を生み出す”ことを目指していた八木さん。越喜来の新鮮な魚介類を地元漁師のお母さんたちに調理してもらい、それを最新のCAS(セル・アライブ・システム)冷凍で瞬間処理し首都圏で販売できないか、と考えていた。
このCAS冷凍を利用すれば三陸から遠い埼玉・志木でも、地元漁師が食べてきた「漁師めし」など新鮮な魚介類が提供できますよ、と松井さんに提案してみた。ちょうどそのころ松井さんは、姉の夫が死去したため休業していた志木の飲食店管理を任されていた。八木さんの後押しもあって、休業していた店で居酒屋「越喜来や」をオープンすることになったのである。
カナガシラの姿揚げ |
開店して2年が経った現在、店には復興支援を通じて三陸と関わりのある人たちに加えて、口コミで地元の人たちが集まるようになった。豊富な店のメニューは1品平均500円〜600円とリーズナブル。「ドンコのマリネ」「マンボウの湯引き」「カナガシラの姿揚げ」など「漁師めし」や三陸から宅配便で運んでくる魚介類を調理して出す。
昨年から越喜来の地元漁師のお母さんたちと交流するバスツアーをスタートさせた。ウニなど旬の味覚の食べ放題などを企画、これまで50人以上が越喜来を訪れている。11月に4回目となるバスツアーでは、「イクラを十分堪能してほしい」と松井さんは話す。
地酒各種 |
越喜来との縁ができたことで、東日本大震災による被災者のことを深く考えるようになった松井さん。被災から4年目になっても進まない状況に憤りを見せる。
「まだ、仮設住宅から出られない人も多いんですが、地元漁師のお母さんたちと会っていると、この人たちが被災者? と思うぐらい前向き。こちらが逆に励まされています」と話す。「店やツアーが復興支援になっているとは断言できませんが、継続することが東日本大震災で被災した人々のことを忘れない一助になると思うんです」と話し、今後も復興支援の輪を広げていく考えだ。
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「越喜来や」三陸バスツアー
11月7日(金)〜9日(日)開催。参加費2万5000円(往復交通費・宿泊費・8日昼・夕食代・9日朝・昼食代、旅行傷害保険加入代)、定員30人(先着順、定員になり次第締め切り)、出発場所は「三陸の台所・越喜来や」(東武東上線志木駅徒歩5分)。
申し込みは Tel.048・423・6567 |
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