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  埼玉版 平成26年5月号  
“憩いの場”で子どもたちと交流  本庄市・セカンドライフを楽しむ会

左から宮里さん、井上さん、宮里夫人の充子さん、飯島さん、指導員の田邉香苗さん、坂本さん

木や庭石に登ったりするだけで子どもたちは楽しい
 本庄市のシニアたちで活動する「セカンドライフを楽しむ会」(井上光雄会長)が子どもたちとの交流に意欲的に取り組もうとしている。市内の放課後学童クラブ「じぃじとばぁばの宝物 本庄のおうち」(飯島紳太郎・責任者)に協力して、約10年間住んでいなかった住宅をこのほど改修、利用できる状態に直した。今後は、この「本庄のおうち」を拠点に子どもたちとの触れ合いを図るとともに庭園サロンを開くなど、シニアに憩いの場を提供していく計画だ。

 子どもたちが庭を駆けまわり、木登りなどで元気に遊ぶ。それを手作りのピザを食べ、お茶を飲みながらにこにこ眺めるシニアたち—ある日の午後、「本庄のおうち」での光景だ。子どもにシュロの葉でバッタ作りを教えたり、一緒によもぎだんごを作ったりと、自分たちが子どもの頃に覚えたことを子どもたちに伝え、喜んでもらえるのはシニアにとってもうれしいことなのだ。

 「今では想像もつかないけれど、この庭は少し前までジャングルみたいだったんですよ」と「セカンドライフを楽しむ会」副会長の宮里和宏さん(73)は笑う。築41年の190坪もある広い住宅。住んでいた人は10年前に亡くなり、以来、誰も住んでいなかった。その間、庭木や雑草が伸び放題に伸びて、「外からは建屋も見えない状態だった」と宮里さん。いつの間にかハクビシンなどの動物も住みついていたとか。

 「教育関係で使うのなら」という条件で所有者からこの住宅を借りたのが、「じぃじとばぁばの宝物 本庄のおうち」責任者の飯島紳太郎さん(32)だった。「子育て支援をやりたいと思っていた」飯島さん。

 学童保育のために住宅を借りたものの、「どこから手を付けたらいいか分かりませんでした」と話す。それが、「放課後学童クラブをやれるところまでたどり着けたのはシニアのみなさんの力です」とシニアの豊富な知恵と技に驚いている。

 飯島さんと「セカンドライフを楽しむ会」の面々を結びつけたのはぼうぼうと伸びた庭木。宮里さんが、庭木を知人のピザ釜のまき用に譲ってもらおうと飯島さんと会ったのがきっかけだった。

 「自宅で暖炉の火を見ながらおいしい酒を飲むのがリタイア後の楽しみだった」という宮里さん。ピザ釜まで作って友人たちとの交流を楽しんでいたが、その仲間の一人、井上さんに飯島さんの話をして協力することに—。水道工事店を営んでいて木工が趣味、という井上さんが中心となって飯島さんが借りた古い住宅を修理することになった。


子どもにシュロの葉でバッタ作りを教える
シロアリに驚く
 昨年12月から着手してまず、最初に水回り関係を直した井上さん。続いて建屋の修理を始めようと床を検査してみてびっくり。ほとんどがシロアリに食われていたからだ。井上さんに宮里さんの仲間の坂本邦彦さん(72)らも加わって床を全面的に修理する作業を開始し、すべてを終えたのが3月頃だった。

 「床下を見るとシロアリに食われたところばかり。2部屋の和室、台所、トイレ、4畳半の部屋など次から次へと結局、全部の床を直すことになりました」と井上さん。「年を取ればどんなやり方をすればいいか大体分かります」と謙遜する。「今回、協力しようと思ったのは32歳の若さで古い家をきれいにし、そこで学童をやろうという飯島君の気持ちを意気に感じたからです」と話す。

 「本庄のおうち」には現在、22人の学童が通っている。「両親が仕事をしていたり、シングルマザー、親などの介護で仕事ができなくなって、公立の学童クラブへ入りにくくなった家庭の子どももいます」と飯島さん。すでにほぼ定員に達しているが、今後、介護に携わる家庭からの子どもが増えてくる、と予想している。

 本庄市も他の自治体と同様、核家族の家庭がほとんどで、一方で独居の高齢者が増えている。「高齢者と子どもたちが触れ合う場になっている『本庄のおうち』には、私たちも注目しています」と話すのは、本庄市社会福祉協議会の関根達也さん。


井上さんが作った東屋(あずまや)が憩いの場になる
介護に悩む人も
 関根さんによると、本庄市内には高齢者が利用できるサロンが25カ所あるが、健康体操などを通じて健康づくりを目的とするところがほとんどという。

 「本庄のおうち」では、学童保育として利用する時間帯(午後3時〜6時)以外で毎週木曜午前10時〜午後2時を「セカンドライフを楽しむ会」に利用してもらい、同会では様々なイベントを行おうと計画している。

 「手作りケーキやコーヒーを一緒に楽しむサロンや囲碁・将棋、歌声喫茶など開いたりして、おしゃべりをしながら楽しいひとときを過ごしたい」と宮里さん。夫人で、介護サポーターズクラブ本庄代表を務める宮里充子さん(68)は、「介護をしている人たちの悩み相談など交流の場を月の最終木曜に開いています」と話す。

 イベントが無い時でも、気軽に出かけてきて子どもたちと話をして元気をもらって帰ることが可能な「本庄のおうち」。祖父母の顔を年1、2回くらいしか見ることができない子どもたちにとっても、そんなシニアとの交流は得るものが多いはず。

 シニアと子どもたちの世代を超えた交流が本庄市で始まろうとしている。

 問い合わせは、「セカンドライフを楽しむ会」Tel.0495・71・9839

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