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「人と犬が向き合うドラマに」 映画監督・平松恵美子さん |
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「究極の動物映画になった」と平松さん。気分転換はネコと遊ぶこと |
映画「ひまわりと子犬の7日間」で監督デビュー
約5年前に宮崎県の保健所で起こった犬と人間の奇跡の実話を映画化した「ひまわりと子犬の7日間」が16日(土)から全国公開される。収容された保健所内で、生まれて間もない子犬を守るために近寄ってくるすべての人間を激しく威嚇(いかく)する母犬。そんな母子犬(ははこいぬ)を助けようと懸命に努力する保健所職員とその家族を描いた物語だ。監督は、約20年にわたり日本映画の第一人者・山田洋次監督との共同脚本、助監督を務めてきた平松恵美子さん(45)。今回が監督デビュー作になる。「犬と人間が真正面から向き合うドラマになった」と語る平松さんに話を聞いた。
「なんていうか、私一人が作った映画ではないとすごく感じる。“山田組”で一緒に仕事をしてきた仲間たちが撮影や照明、録音などのスタッフに付いてくれたからこそ完成できた。この作品は私の中でいとしい子どものような存在」と語る平松さん。映画公開日をドキドキしながら待っている様子だ。
「こういうのはどうですか」—。ある日、映画の企画を相談していたプロデューサーから示されたのが「奇跡の母子犬」(山下由美著・PHP研究所)という本。読んだ後、平松さんは「これは究極の動物映画になると思った」と言う。
「動物がかわいいだけでなく、また動物を素材に人間が勝手に芝居しているのでもない。動物と人間が同じ目線で向き合って一つの物語を紡いでいく」—。それが平松さんの考える「究極の動物映画」の条件。
これに山下さんの著書がぴったりだと感じた平松さんは、初監督作品の原案を同書と決め、「家族の物語にも、成長物語にもなる」と、どんどん構想を膨らませていった。
平松さんは、山田洋次作品の共同脚本家として「武士の一分」「母べえ」「おとうと」などで、それぞれ日本アカデミー賞脚本賞を受賞した実力を持つ。
殺処分をどう描くか悩む
しかしその平松さんでも、母犬ひまわりの過去や主人公の家族ドラマを盛り込みつつ、殺処分のことをどう描くか最後まで悩んだという。脚本は30稿まで練り上げられ、約1年かけて書き上げられた。
そうやってまとめられた物語は—。ある日、母犬と生まれたばかりの子犬が保健所に収容される。7日の間に引き取ってくれる人が出てこないと殺処分される運命にある母子犬。「なんとかしてこの母子犬の命を助けたい」と努力する主人公の彰司とその子どもたちだが、その思いはなかなか通じない。そして、母子犬の命の期限は刻々と迫っていく。
人間に敵意を抱く犬に再び人間の愛情が伝わるのか、というのがこの作品の核になっている。「戦争やテロを生み出す憎しみの連鎖とは反対に、一匹の犬と一人の人間との愛情の関わり合いが一つの記憶となり、その記憶が次世代へと受け継がれる。そんな愛情の連鎖というものもあるのでは…。いや、あるはず」と平松さん。
現代は、数多くの犬や猫などがペットショップで売られるペットブーム。その陰で年間5万匹を超える犬が殺処分されている(2010年度、環境省)。猫を加えるともっと多くの数字になる。「NPOやボランティアの人たちが熱心に里親探しをしたりして一時より(殺処分の数は)減少しているが、もっと国や自治体はこの問題に積極的に取り組んでほしい」と訴える。根本的には、「日本人一人一人が、一匹の犬や猫が生まれてから最期まで、きちっと面倒をみるという責任感を持つことが大切」と話す。
岡山県倉敷市出身で、子どものころから映画が大好きだった平松さん。岡山大学理学部卒業後、就職のために上京したが、「東京にいるうちに映画の製作を学びたい」と松竹が運営する鎌倉映画塾に入塾。その入塾中に、「作品が出来上がるまでを見せてほしい」と希望したのが山田監督との縁が生まれるきっかけだった。
「見るだけではつまらないだろ」と山田監督から言われて1993年公開の映画「学校」の撮影に参加する。以来、これまで長く山田監督とやってこられたのは、「結局、見ている方向が一緒だったから」と平松さん。今回監督をやってみて気付いたという。
これまで山田監督作品の助監督として数々の名作を生み出してきた平松さん。初の監督作品を世に出した今、これからの抱負についてこう話す。
「山田さんが時々使う言葉なんですが、懸命に生きる人を真面目に見つめる作品を作っていきたい。そこに付け加えるならば、ユーモアを忘れずに、ということですね」。重いテーマをなるべく軽やかに描こうとする、平松さんの次の映画が今から楽しみだ。 |
(C)2013「ひまわりと子犬の7日間」製作委員会 |
「ひまわりと子犬の7日間」 日本映画
監督・脚本:平松恵美子、出演:堺雅人、中谷美紀、でんでん、若林正恭(オードリー)、吉行和子ほか。117分。
16日(土)からMOVIX三郷(TEL.048・949・2300)ほかで全国公開。 |
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