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100歳200人に向けて再スタートを切った林さん。「(撮影者数は)現在、合計125人になりました。わたしのライフワークとして撮り続けたい」と話す |
町の写真店店主がボランティアで
ボランティアで100歳のお年寄りを無料で撮影し写真をプレゼントしているのが、久喜市で創業以来94年続く(株)林写真館(久喜中央)の3代目、林明さん(69)だ。昨年秋に写真展「百歳百人の顔」を開催したところ、あちこちから「撮影してほしい」との要望が相次いだ。林さんは予想以上の反響に思いを新たにし、200人を目標に100歳のお年寄りの撮影を続けている。「カメラのシャッターが切れなくなるまで撮り続けたい」と意気込んでいる。
林さんが100歳のお年寄りを100人撮ろうと思い立ったのは、経営していた林写真館を息子が4代目として引き継いでくれて、時間に余裕が生じたことがきっかけ。
「これから第2の人生のスタート。何か人の役に立てることはないか」と考えてみたが、なかなか目標が見つからない。
そんな折、手にした新聞に「埼玉県に住んでいる100歳以上のお年寄りが1000人になった」という記事が載っていた。
「これだ」とひらめいた林さんは、「100歳のお年寄りの写真を撮影して、その写真をプレゼントしてあげよう」と決心。目標を3年間で100人と定めた。
ところがいざ、始めてみると予想以上に高かったのが情報の壁。個人情報保護法が施行されていることもあって、簡単に100歳のお年寄りに関する情報が集まらない。
友人の友人、そのまた友人というように、縁を手繰り寄せるように探し求め、ようやく第1号の撮影者を見つけたのは撮影を思い立ってから4カ月が過ぎていた。
しかし、この時に気持ち良く撮らせてもらえたことが、林さんに、自らの目標への手応えを感じさせた。手探り状態ながら1年目に10人、2年目で20人を撮影。
100歳のお年寄りを探す苦労は相変わらず続いたが、次第に口コミなどで広がっていき、自らが所属するロータリークラブの会員誌に情報提供を呼びかけたことも奏功し、少しずつ撮影機会が増えていった。
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写真はほとんどがストロボはたかずに自然光で撮影した。「その方が立体感が出るから」と林さん |
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新たに200人を目標に
1、2年目の苦労が実って3年目は一気に70人以上を撮影することができ、3年という予定期限内に目標の100人を突破することができた。
「無我夢中で撮影してきました。やっと目標達成が見えてきたと思ったのは80人目のお年寄りを撮影した後でしたね」と林さんは振り返る。100人を撮影できた一方で、「寝たきりになった」などの理由で断られたことも40人を数えた。中には、こんなケースもあった。ようやく100歳のお年寄りを探し当て家族も撮影を喜んでいたが、本人の女性から「こんなしわだらけの顔を撮影してどうするんですか」と断られたという。
結局、林さんが撮影に行った場所は埼玉に止まらず、茨城など関東地区はもちろん、北海道や東北、関西、中国、四国、九州まで全国規模に広がり、100人の内訳は男性23人、女性77人だった。
撮影には車や電車を利用し、ガソリン代などの費用はすべて自前。電車で行く場合にはJR全線の普通・快速電車に乗り放題の格安フリー切符「青春18切符」を利用するなどしてできるだけ費用を切り詰めたという。
こうして約3年かけて撮影した作品を昨年10月1日〜7日、久喜市中央公民館で写真展「百歳百人の顔」と題して開催。期間中の7日間で約1000人が来場、「写真展を見て感動しました」などの感想も寄せられ、林さんは予想した以上の反響に驚いたという。
「100歳のお年寄りを撮る前に必ず握手をします。握手することでパワーをいただきました」と林さん。撮影は笑顔と両手の甲、可能なら家族と一緒のところを撮影した。100人の中には、入間市の自転車部品会社の経営者や書道家、大学の名誉教授など現役で働いている人が5人もいて100歳パワーに圧倒されたという。
また、こんな思い出深いエピソードも。現役のころに学校で音楽の先生をしていたお年寄りは約20年間もピアノを弾かなくなっていた。しかし、林さんが撮影のために「ピアノを弾いてくれませんか」と頼むと、快くピアノを弾いてくれたという。その後家族から、「あれから毎日ピアノを弾くようになり、おじいちゃんがどんどん若返っていくようです」と便りが届いた時は林さんもうれしかったという。
展覧会後にはこんな印象深いエピソードと写真を「百歳百人の顔」と題して1冊の本にまとめ、掲載させてもらった人たちにプレゼントした。
「撮影しながら聞いてみた長寿の秘けつは、食べ物の好き嫌いがなくて腹八分目でよくかんで食べることでした」と林さん。これからも体が続く限り、全国どこにでも100歳のポートレートを撮影に行く考えだ。
問い合わせは林写真館 TEL.0480・21・0245 |
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