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被災した子どもたちに音楽を届けて ピアニスト/小山実稚恵さん |
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ネコが大好き。飼い猫のララちゃんは「体が柔らかくて“イナバウアー”のポーズが得意です」(都内の自宅で) |
岩手、宮城、福島で生演奏
「“生”の音楽を被災地の子どもたちに届け、元気付けてあげたい」―という思いで東北の学校や公共施設で演奏を続けているピアニストの小山実稚恵(こやま・みちえ)さん。チャイコフスキー国際コンクール第3位(1982年)、ショパン国際ピアノコンクール第4位(85年)と2大国際コンクールに入賞した唯一の日本人ピアニストだ。被災地での音楽活動で、素直な気持ちを伝えることの重要性を改めて感じたという小山さん。9月8日(土)サンシティホール(越谷)でピアノ・リサイタルが行われる。
これまで国内外の有名なオーケストラや世界的指揮者との共演を数多く行ってきた小山さん。古典から近現代までのコンチェルト(協奏曲)のレパートリーは60曲以上と幅広く、年間約60回の演奏会を行っている。アルバムは最新作「ヴォカリーズ」(ソニー・ミュージックジャパン インターナショナル)で26枚になる。
1年のうち約3分の1を海外や国内での演奏活動に費やしているという小山さん。こうした音楽活動の傍ら大切にしてきたのが、子どもたちに生演奏を聴いてもらうアウトリーチ活動。1人でも多くの子どもたちに音楽の素晴らしさを知ってもらおうと時間を作っては、さいたま市などの小中学校などを訪れ演奏してきた。
そんな中で起こったのが昨年3月の東日本大震災。59年に仙台市(宮城県)で生まれ、盛岡市(岩手県)に中学2年まで住んでいた小山さんは、いろんな思い出が残る東北の惨状に大きなショックを受けた。
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6歳からピアノを弾き始めた小山さん。「ピアノにはたくさんの弾きたい曲があり、幸せ。一生のうちにどの曲を弾くかという選択は、どの本を読むかということとよく似ています」と話す |
ロシアのオーケストラとも共演
「何かをしなければ」という思いで胸がいっぱいになった小山さんは、「わたしのピアノで勇気や元気を与えることができるなら」と被災地の学校や公共施設などで演奏することを決意。昨年以来、岩手や宮城、福島の震災による被害が大きかった町をたびたび訪ねている。
被災地の子どもたちの前で演奏して改めて感じたのが音楽の持つ力だった。復興過程で落ち着かない中での演奏だが、聴いているうちにだんだんと音楽に集中してくる子どもたち。その真剣さは演奏している小山さんにもひしひしと伝わる。それだけ子どもたちが音楽に感動や楽しさを切実に求めていると感じた小山さん。「美しい曲とか楽しい曲を演奏すると子どもたちはすごく喜んでくれる。それだけ心が傷んでいるのでは」と思いやる。
今まで便利さを追求し営々と築いてきた文明社会。それが地震という自然の力によって一瞬にして失われてしまう。その現実を見せつけられた小山さんは、震災以降世の無常を感じているという。
しかし、そういう環境にあっても懸命に生きる被災地の子どもたち。そのけなげな姿を見て、小山さんは生きていく上で本当に大切なことは何かを教えられたように感じた。
演奏する時に、「こう聴こえたら、こういうふうな解釈があったらと思うけれど、それより自分の気持ちを素直に表現することのほうが大事」と改めて思っているという。
この秋、小山さんには大きな演奏会が控えている。まず10月15日(月)~17日(水)の3日間、東京・赤坂のサントリーホールでロシアの巨匠、ウラディーミル・フェドセーエフ指揮チャイコフスキー・シンフォニー・オーケストラとの共演。フェドセーエフさんの80歳記念演奏会だ(問い合わせは(株)AMATI TEL.03・3560・3010)。
小山さんと同オーケストラとは縁が深い。「チャイコフスキー国際コンクールでは、チャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番とラフマニノフのピアノ協奏曲第2番を弾いたんですが、その時がフェドセーエフさん指揮のこのオーケストラだったんです」と振り返る。
その後も、日本でのツアーやアルバム「ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第3番」(ソニー・ミュージック)を録音、CD製作するなど共演を重ねてきた。
「このオーケストラは、ロシアという国の風土をそのまま奏でるという感じがします。たとえばピカピカに磨いた窓ガラスではなく、すりガラスのような雰囲気なんですね。それがまた、ロシアの楽曲にマッチしているんですよ」と目を輝かす。
もう1つは、06年から始めた12年間・24回リサイタルシリーズ「小山実稚恵の世界~ピアノで綴るロマンの旅~」。ちょうど折り返しを迎えた今年、春に続き秋もBunkamuraオーチャードホール(東京・渋谷)など全国主要7都市で行われる。申し込みはBunkamuraチケットセンター TEL.03・3477・9999
こうした公演の前に埼玉で行われるのが、9月8日(土)のサンシティホールでのピアノ・リサイタルだ。
これまで埼玉ではサンシティのほか、さいたま芸術劇場などで公演を行ってきた小山さん。今回はバッハ/ブゾーニ:シャコンヌなど、これまでレパートリーに入っていなかった新しい曲を何曲か演奏する予定だ。埼玉の音楽ファンにとって、ダイナミックで情熱的な小山さんのピアノが聴けるいい機会となりそうだ。 |
(C) Wataru Nishida |
小山実稚恵 ピアノ・リサイタル
9月8日(土)午後2時、サンシティホール(東武伊勢崎線新越谷駅徒歩3分)で。構成と話は音楽学者で評論家の岡部真一郎氏。全席指定3300円。
チケット申し込みは TEL.048・985・1112 |
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