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「この機会に見て、感じていただくのが一番。興味を持ったらその次に美術館そばに何軒かある盆栽園を訪れてみてください」と山田さん。今回の個展には約20点の作品を出品した |
カジュアルに楽しめる“彩花流”の普及図る
江戸のころ庶民に愛好されていた盆栽。今は一部の愛好者、主に男性がほとんどだ。そんな盆栽をもっと手軽に、特に女性が気軽に楽しめるようにしたい、と提唱しているのが盆栽家・山田香織さん(33)。盆栽の新流派「彩花(さいか)盆栽」の普及活動の一環として、自らが主宰する彩花盆栽教室やテレビ、著作で彩花盆栽を通じ生活の中に季節感を楽しむことのすばらしさを教えている。そんな山田さんの個展が18日(土)から大宮盆栽美術館で始まる。
今回の個展のテーマは「祈りと喜(よろこび)」。この2つのテーマを週ごとに展示替えしていくという趣向だ。
「祈りでは冬の試練、厳しさの中でも生きている、強さを秘めた眠りの姿を、また、喜ではまもなく迎える雪解け、春が来ることへの喜びを表現したい。今まで盆栽に縁のなかった人たちに来館してもらい、テイストの違う彩花盆栽に触れていただきたい」と山田さんは話す。
いくつもの有力な盆栽園が集まる大宮・盆栽町。その一角にあるのが盆栽清香園。山田さんは、清香園4代目の父・山田登美男氏の1人娘で、父が創始した彩花盆栽の家元として5代目を受け継ぐ。
季節感に心癒やされ
1盆(鉢)1樹で大自然の風景を表現するのが盆栽。これに対して、彩花盆栽では1盆1樹にこだわらず2木3草など鉢の中の要素を増やすのが特徴だ。「盆栽は1盆1樹しかないので、枝葉を増やして美術的要素を増やしていくには5年、10年と多くの時間がかかります。彩花盆栽では作ったその年から景色が楽しめるんです」と山田さんは説明する。
この彩花盆栽を特に女性に広めたいと山田さんが考えるのは、盆栽を一部のコレクターだけでなく江戸時代のころのようにもっと庶民に楽しんでもらいたい、という願いからだ。日常的に鉢植えを飾るなど一般的に女性は花木に関心の強い人が多い。「自由なスペースが限られた庭やマンションのベランダなどでコーヒーを飲みながらほっとできる瞬間を持って欲しい」と山田さん。
女性への普及を図るために山田さんがこだわっているのは器。鉢を手のひらサイズにして年配の女性でも簡単に持ち運びが出来るようにしている。「女性が洋服選びを楽しむように、いろんな形、バリエーションの器を窯元さんにお願いして作ってもらっています」と話す。盆栽にかかる費用も女性が気軽に楽しめるように小遣いの範囲、数千円に抑えたという。
盆栽に使う木は古い物になると何十万円もすることも珍しくないが、彩花盆栽では若木を使う。「価格を抑えるために3、4年生などを使っています。育てていくのに手間はかかりますが、(彩花盆栽)教室に通う女性の皆さんにとって育てる過程は楽しみでもあるようです」と山田さん。
次の年の春に1輪でも花が咲けばそのけなげな姿に感動を覚えることも多いという。
植物に興味を持つようになると、その原風景に直に触れたくなる。日本の美しい風景を求めて旅行や散策をするようになり、これまで漠然と眺めていた風景が自分なりに解釈できるようになって旅の内容が濃くなっていくという。「季節感に敏感になり、心の豊かさを感じることができます。まさに(天からの)恵みですね」と山田さん。
1999年から始めた彩花盆栽教室は現在、盆栽町本校、表参道校(東京・渋谷)で生徒数が約800人、昨年から大宮そごう校が開校したほか通信講座も行っている。「生徒さんの85%が女性。年代は40代〜60代が中心」という。
清香園が創業したころの江戸は幕末・嘉永期。黒船が来航したりして世情が不安定だった。しかし一方で、長屋住まいの庶民は盛んに盆栽を楽しみ、互いに自慢し合っていたという。その後、明治の元勲や政財界のパトロンたちから愛好されるようになるなどで、盆栽は次第に庶民から縁遠いものになっていった。
「男に生まれていたらおそらく彩花盆栽をやっていないと思います。女に生まれたという弱みを逆に強みにしたいな、と思っています」と山田さん。「盆栽は男性の趣味という固定概念を打破したい」という言葉に力を込め、内面の強さをうかがわせた。 |
雪解け(ゆきどけ) |
風吹く桜坂 |
山田香織個展 彩花盆栽 祈りと喜
18日(土)〜3月14日(水)、大宮盆栽美術館(JR土呂駅徒歩5分)で。
さいたま市大宮盆栽美術館が3月で創立2周年を迎えるのにあたって、作家の個展を初めて開催。人形の東玉(岩槻市)の協力でひな飾りと一緒に盆栽を展示する試みも行う。観覧料300円。
問合せは TEL.048・780・2091
サクラのお花見盆栽づくり〜今年の春はおうちでお花見を!
19日(日)午後、21日(火)午前・午後、22日(水)午前・午後、27日(月)午前・午後、彩花盆栽教室大宮そごう校(JR大宮駅徒歩1分)で。
通常7350円のところ「定年時代を見た」といえば5250円に割り引く。なお、3月も予定しているほか、盆栽町本校でのクラスや年間コースもある。詳しくはホームページhttp://www.seikouen.ccで。
申し込みはフリーダイヤル0120・82・9387(午前10時半〜、午後2時半〜)。 |
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