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ペーパーアートを考案し、同クラブを指導する知念さん。自作を見せながら、「奇麗な色の広告が入っているとうれしい」と話す |
絵の具は毎日配られる新聞の多色刷り広告や折り込み広告。その中で必要な色の部分を下絵に沿ってはさみで切り取り、そうやって作った絵の“パーツ”を台紙に貼って1枚の絵に仕上げる—。この古新聞を活用した絵画手法、「ペーパーアート」を考案したのが川口市在住の知念徹さん(75)。新聞を素材にどんな作品ができるのかと、知念さんが指導している川口市元郷の「ペーパーアートクラブ」を訪ねてみた。
川口市の主婦ら和気あいあいと
埼玉高速鉄道川口元郷駅からバスに乗り「元郷6丁目」下車、徒歩1分で南平公民館。この2階にペーパーアートクラブは毎月3回集まっている。会員数約30人。この日は11人が和気あいあいと作品作りにいそしんでいた。さっそく指導中の知念さんにどんなふうに作るのかを聞いてみた。
用意するのは、絵の具代わりの新聞広告とのり、はさみ。作業手順は、(1)知念さんが事前に用意した花や風景などの下絵をもとに、新聞広告をはさみで切り取り、絵の各“パーツ”を作る。このとき、どんな色にするかは各人の判断(2)下絵の“パーツ”が出来上がると、黒の台紙の上に配置してのり付け、絵を完成させる—というもの。
「下絵には各“パーツ”ごとに枚数や台紙に張る順番を書いてあります。誰がやっても出来るようにしています」と知念さん。1回2時間の指導だが、1枚の絵が出来上がるには2週間くらいかかるという。
藤田さん=中央=らペーパーアートクラブの面々 |
何かできないか、と考案
ここで、生徒たちの話を聞いてみよう。小堀恵美子さん(72)はペーパーアートを始めて4年目。「やっていて楽しい。(授業を)休んだことはありません」と話し、ぼけ防止になる、とも考えている。
妻が一生懸命取り組んでいると家族も協力しようという気分になる。「夫が、今日はこんなのが入っているよ、と言って新聞広告を取っておいてくれる」と話すのは立岡雅世さん(68)。新聞が届くとまず、広告面を見て欲しい色を探しているという。よく使うので特に、注目している色がグリーン。「新聞広告にはグリーン(緑色)を多くしてほしい」と“注文”する。
同クラブ代表の藤田初枝さん(71)と幹事の井上千江子さん(69)は、知念さんと同じ会社に勤めていた関係で9年前に同クラブを発足させた。「ペーパーアートを始めてから生活に張りが出来た。それに、教材費がほとんどかからないのがいいですね」と藤田さん。ただ、最近景気の影響からか「折り込み広告が減少し、多色刷りの新聞広告も減っているのが気になります」と井上さんは話す。
沖縄県出身で川口市に本社がある化学会社に長年勤めてきた知念さんがペーパーアートを考え付いたのは、65歳で定年になってから。「仕事をやめてからどうしようかと思っていたとき、配られてきた新聞の折り込みがとても奇麗だったんです。これを使って何か出来ないかな、と考えました」と知念さん。
新聞広告を葉の形に切り取る |
教員で二科会会員だった父の影響もあり小さいころから絵を描くことが好きで、若いころは埼玉県主催の展覧会にも何回か入選したという。
「退職後は年金暮らしで画材を買う経済的余裕はない。しかし、新聞広告を使えば…」と思い付く。そして、「自分だけでなく、皆さんと一緒に楽しめないか」と南平公民館に相談したのが同クラブ誕生のきっかけとなった。切ったものを台紙に張って表現する、という意味でペーパーアートと名付けた。
今では、鳩ケ谷にも同じようなシニアのクラブが出来、その他ボランティアで3カ所の小学校で教えている。その人数は合わせて100人近くにもなるという。「絵のうまい下手は関係ありません」と知念さん。「既成概念にとらわれず自分の感性を生かすように」と指導している。
参加は随時受け付けている。会費は月1000円。
問い合わせはペーパーアートクラブ・藤田 TEL.090・3544・3782 |
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