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  埼玉版 平成23年4月号  
帝国ホテルの人々描く  作家/村松友視  ※「視」の字は「示」の右に「見」

村松さんは“話の達人”。この日(1月23日)はさいたま文学館(桶川市)で600人を前に90分間講演したが、ユーモアを交えた話に最初から最後まで聴衆の笑いが絶えなかった。現在、野良猫をテーマにした小説を執筆中で、6月頃に出版されるという
 約30年前に「時代屋の女房」で直木賞を受賞した作家の村松友視さん(71)が古希を過ぎてますます、盛んな執筆活動を続けている。昨年、市川雷蔵や吉行淳之介などの話を集めた「人生の達人」(潮出版)を出したのに続き、今度は帝国ホテルの現場の人たちを取材した「帝国ホテルの不思議」(日本経済新聞出版社)を出版。現在、新たにネコの物語を執筆中だ。そんな村松さんは最近、作家であった祖父の影響を強く意識し始めたと言う。

古希過ぎても執筆に意欲
 1940(昭和15)年に生まれた村松さんは、静岡県清水市にある、父方の祖母の元で育てられた。というのも、中国・上海で暮らしていた父が27歳で病気(腸チフス)で死亡、その時、20歳で妊娠3カ月だった母は村松さんを産んだ後、他家へ嫁いだからだ。

 祖父は作家の村松梢風。当時は鎌倉で別の女性と暮らしており、村松さんも休みなどに時々、祖父の家へ行ったりしながら育ったという。「鎌倉の家はスパイスやバター、チーズの匂いがする世界。清水の方はシャケと紅ショウガとゴマ塩の世界だった」と村松さん。こうした幼い頃の経験からか、村松さんの観察眼は鋭い。

 「僕は一家だんらんとか親子のきずなが無くて育った。すると、他人の景色というのが“借景”として重要なんですね」と村松さん。自分の周りにいる人々—、例えば酒場で一人で飲んでいる時、周りにいるのはまったく関係のない人たちだが、「何をしている人たちか」と観察しながら想像するのが好きだと言う。「そこへ名刺を持って入って行くんじゃなくて。そこは確かめたくない」

 そんな村松さんの観察眼から生まれたのが、昨年6月に出版した「人生の達人」(潮出版)。これまで出会った作家や俳優などのエピソードを通して「年齢を重ねることはすてきだ」というメッセージが込められている。また、昨年11月の「帝国ホテルの不思議」(日本経済新聞出版社)では、創立120年になる帝国ホテルの現場で働く人たちのプロ意識を描いた。

 これら近著でもそうだが、人でも動物、あるいは花でも、「見続けること」を村松さんは重視する。「見ているということは何か意味があるんじゃないかな。例えば、ネコは大体15、16年の間に生まれてから最後までを見届けることができる。イヌを飼うことや、30歳を過ぎたくらいで引退する大相撲も同じ。最初から最後まで見続けることがだいご味だと思う。人間の子供はある年齢になると親から離れちゃってずっと見続けることができませんよね」

 かつて「アブサン」というネコと“住んでいた”村松さんは、ネコの生態に今も強い関心を持っている。そんな村松さんは、幼かったころの自分の姿が“外ネコ”とだぶって見えることがあるという。

 外ネコとは、野良猫でありながら、親しくなった人の家に通って餌をもらったりするネコのことだ。

「作家・祖父との縁感じる」
 「外ネコは、いろんな家に行って、行く先々でいろんな名前で呼ばれて『ニャオ!』とやってるでしょ? 私も、清水でばあさんに育てられながら、鎌倉のじいさんの家に行くと『こっちの子』みたいにして客たちに振る舞ったりしていたわけです」と村松さん。

 しかし、最近になって感じるのが、祖父との強い縁。「自分で勝手にやってるつもりなんだけど、どこかでしょせんじいさんの手の内にいるのかな」と思っている。

 最初は、中央公論社への就職。学生(慶応大)時にテレビ局のアルバイトをしていた村松さん、卒業後はそのままテレビ局の社員になろうと考えていた。ところが突然ルールが変わり、正規の採用試験を受けたが失敗。慌ててテレビ朝日、集英社、小学館を受けるが不採用、「日劇ミュージックホールの台本書きも受けた」という。最後に受けた中央公論社に入社したのだが、「これはたぶん、じいさんの縁だと思う」と村松さん。

 中央公論社では、雑誌「婦人公論」や文芸誌「海」などで編集者として活躍、同時に作家を志し、80年に出版した「私、プロレスの味方です」がベストセラーになった。その後、退職して作家に専念、82年「時代屋の女房」で第87回直木賞を受賞した。

 しかし、ここでも「祖父との共通性を感じる」と村松さん。「私には、作家の武田百合子や吉行淳之介、幸田文など、人物を調べて書いた作品がいくつもあるんですが、じいさんはそれをすごくやった人なんです」。

 また、祖父には「近世名勝負物語」の著書があるが、村松さんも勝負のあやを見るのが好き。中学、高校時代に文芸部に入ったことがなく、慶大文学部の文芸誌「三田文学」にも関係していなかった村松さんが自然と作家の道を歩むようになったのも、祖父の影響があったようだ。

 ところで、新聞や雑誌、単行本など印刷物の将来はインターネットの普及に伴い、大きな変化が予想されているが、自らを「根魚(ねざかな)」と称する村松さんは、「海表面の動きはあまり関係ない」と話す。「人生は邪念というようなことから転がることもある。あみだくじみたいなもんだと思うんですよ。それで、ここまで来たということは、計画を立ててもその通りに行くわけがない(笑)。変に計画を立てない方が得かな」

 祖父が亡くなったのが、72歳。これまで漠然と「72歳くらいまで生きればいい」と思っていた村松さんだが、「おかしなもので、それが目の前になると80歳くらいまでかな、と思っています」と笑う。寄る年波に逆らうことなく、年相応に内面を充実させて生きていくのが「人生の達人」と村松さんは考えている。

「帝国ホテルの不思議」
 昨年11月3日に創業120周年を迎えた日本屈指の名門ホテル。その伝統の力をバーテンダーや宿泊担当者などホテルで働く30人に村松さんが取材し、浮き彫りにした。
(日本経済新聞出版社、2520円)

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