|
「初めての落語は、初めて食べる料理と同じ。何を聞くかが大事」とたい平さん |
若手の成長、見続けるのも楽しい
放映45年目に入っても高視聴率を続ける人気番組「笑点」(日本テレビ系)。その名物コーナー、大喜利メンバーである林屋たい平さん(46)は秩父出身でさいたまに対する思いが人一倍強い。14日(金)には、「彩の国さいたま寄席・林屋たい平とおすすめ若手落語会」(さいたま芸術劇場)に出演、同落語会を旬の若手が出演する「さいたま初の落語会に育てたい」と意気込む。
都心に近いさいたまでは、落語や演劇、映画などを東京で見る人も多い。そんな中で数少ない、さいたま発の落語会として回を重ねているのが彩の国さいたま寄席。昨年からたい平さんが出演者を人選し、「林家たい平とおすすめ若手落語会」として開催されている。
今回出演するのは、たい平さんのほか古今亭菊志ん、柳家三之助、古今亭志ん八の3人。「みんなすごく頑張っている人たちで、私よりかなり若いんですよ」とたい平さん。「さいたまのお客さんに若手落語家を育ててもらい、この落語会じゃないと見られない、聞かれないものができればいいなあ、と思っているんです」とたい平さん。言葉の端々にさいたまへの気持ちが伝わってくる。
「落語の楽しみ方の1つに若手の成長を見続けることがあります」とたい平さん。
「すでに芸が完成した落語家や故人の噺家をCDで聞くのもすてきですが、今を輝いている若手落語家をひいきにしていただくと『あの初々しさから10年、20年がたったのか』なんて楽しめます」
同落語会とたい平さんの縁は深い。11年前、二つ目(落語家で前座と真打の間の格のこと)の時に「彩の国さいたま寄席」の前身、「拾年百日亭」に出演。さいたま芸術劇場が主催する彩の国落語大賞(平成10年度)を受賞した。受賞後は、「さいたま出身だから受賞した、と言われないよう頑張らなければ」との思いで精進、翌年真打に昇進した。
今では、「落語を知っていれば人生が豊かになりますよ」と、一人でも多くの人に落語の魅力を伝えたいと考えるが、落語との出合いは遅かった。
学校の先生になろうと入った武蔵野美大でたまたま落語研究会(落研=おちけん)の部室をのぞいたことがきっかけ。廃部寸前だった落研に「自分が入って存続するなら」という軽い気持ちで入ったという。生家はテーラーで、「お笑いは好きだったが落語はまったく聞いたことがなかった」というたい平さん。落研に入ってからも落語をまじめに聞いたり、人前で演じることはなかったという。
しかし、大学3年の時にラジオで聞いた柳家小さん(5代目)の「粗忽長屋」に感銘を受け、落語を真剣に聞き始めることに。そして、就職を控えた4年の時に、落語家になるかどうかを決める一人旅に出たのである。
旅先でのことはたい平さんの著書「笑点絵日記」(ぴあ)などに詳しいが、旅先で出会った人に落語を演じ、その思いを語ったりした。その経験から落語家になる決心が固まったという。
内弟子の経験に感謝
進路を決めるため旅に出た理由をたい平さんは、「落語をやるとどんなふうに人から喜ばれるのか、どんな笑顔が見られるのかということを理屈ではなく体で感じたかった」と振り返る。
大学卒業後、たい平さんは1988(昭和63)年に林家こん平に入門、内弟子として大師匠・三平宅に住み込んだ。「今も仕事をさせていただけるのは内弟子経験があるから」と感謝している。
仲間と遊んだりする自由な時間はなかったが、師匠と一緒にいることで芸だけではなく、生きざまや処世も学べたと言う。また、「どうしたら(家の人たちが自分のことを)嫌だな、と思われずに住まわせてもらえるかと考えていました。それは、どうしたら喜んでもらえるかと考える、芸人として一番大切な修行でもありました」と話す。
そんなたい平さんが尊敬する落語家は師匠・こん平と古今亭志ん朝だ。「志ん朝師匠には近くに置いてかわいがってもらいました」と亡くなった今もあこがれの存在だと言う。
ただし、2人を尊敬し、あこがれていても「目標ではない」とたい平さん。「頑張ったらあのようになるんだな、というのが見えてつまらないでしょう? たい平が頑張ったらどうなるんだろう、というのが楽しいと思うんです」
こん平師匠に入門してから22年。今では、人気と実力を兼ね備える落語家になった。
「しかし」、とたい平さん。「今は目標に向かって枝を伸ばすんじゃなくて、無駄な枝や葉もたくさん付けている段階」と、自分を観察。「無駄な枝葉が果たして栄養分になるかどうか分からない」と言いつつも、「最終的に枝を切り落とした時に『林家たい平』という1つの枝ぶりができればいい」と考えている。 |
撮影=加藤英弘 |
「林家たい平とおすすめ若手落語会」
14日(金)午後7時開演、彩の国さいたま芸術劇場(JR与野本町駅徒歩7分)で。全席指定3000円(一般)。
チケットの申し込みはチケットセンターTEL.0570・064・939 |
|
| |
|