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「みなさんも『最後の旅』を心豊かに過ごしてほしい。好奇心を失わず、生き生きと暮らしてください」と三宅さん |
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軸足を地域に置いて 寄席や歴史探訪開催
生活者の立場で、地域に根ざした文化づくり、コミュニティづくりに取り組んでいるさいたま市のグループ「市民文化センター」。1978年の発足以来、その活動内容は「落語の普及・振興活動」、地域資源を目と足で知る「歴史探訪散歩」、「さいたまふるさと塾」、「日本参道狛犬研究会」、各種学習会・交流会開催など多岐にわたる。
市民文化センター代表の三宅稜威夫(いづお)さん(72)は、活動のきっかけを「わたしたちは『仕事』『家庭』『地域』『個』という4つの世界を持っていると思うのですが、あるときふと、妻子や親はしっかりと地域に根ざした暮らしをしているのに、自分をはじめ多くの男性にはそれが無い。しかも経済発展、モノ、カネといった功利的尺度を優先する考え方…、はたしてそれでいいのだろうかと疑問を感じました」。
それまでの仕事中心の生活から「地域」「家庭」に身の置き所を変えようと決心、39歳で早期退職した。家族には事後承諾だった。「もちろん、家族を養う責任はあるわけですから、それだけの収入は確保しなければいけません。幸いわたしも女房も人並み以上を望む性格ではありませんので特に不自由は感じませんでした」という。
手始めは落語の普及活動だった。
「落語は日本固有の話芸だと思います。話を“聞く”だけではなく背景にある江戸庶民の暮らしや、歴史などを勉強していくうちに興味がどんどん広がり、それが歴史探訪になり、こま犬研究になっていったのです」
活動の一つである“浦和市民寄席”の開催数は410回を超えた。歴史探訪散歩も毎回多くの参加者がある。資料づくりや下見などにかなりの時間を割くこともあるが「それも勉強ですから…」と笑顔をみせる。
三宅さんは現在の自分の生活を「人生最後の旅」と表現する。第1の旅は、貧しくても家族・地域で助け合った出身地長野県飯田市での生活。第2の旅は1人で上京し住み込みで働き、苦労を重ねながら大学生活を送った日々。第3の旅は会社勤めを始め、仕事に打ち込み充実していた毎日。そして最後の旅が退職後の30数年間の活動というわけだ。「この選択をして良かったと思います」
心が動く「何か」見つけて
「三宅さんのこれまでの人生で一番うれしかったことは?」と尋ねると、しばらく考えた後「うーん、女房が(活動を含め)わたしと一緒の道を歩んでくれたことでしょうか…。こんなこと彼女には言っていませんが」。
会員たちには活動のテーマは自分で見つける、成果よりもその過程が、また継続すること、身の丈にあった取り組みが大切、幹事などの役割は回り持ちにすること、と常に話しているという。
定年世代へのメッセージは「一度しかない人生です。みなさんも最後の旅を心豊かに過ごしてほしい。心が動く何かを見つけて追及してください。大きなことでなくていいのです。人から勧められたものは長続きしません。自分で見つけてください。そして毎日を生き生きと暮らすためには好奇心を失わないこと。幼児が『なぜ? どうして?』と聞くあの気持ちです。そして忘れてならないのは、変な意味でなく、異性に興味を持つことですね。私は目が輝いている人に魅力を感じます」。
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浦和市民寄席
11日(日)午後2時、市民文化センター(JR浦和駅徒歩5分)で。
出演は桂南喬ほか。2300円(当日2500円、会員1800円)。 |
江戸落語講座
25日(日)午後2時、市民文化センターで。出演は、落語は隅田川馬石、講話は三宅いづお。1500円(会員1000円)。
問い合わせ&申し込みは市民文化センターTEL.048・822・2548 |
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