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「たまに予備知識もなしに映画館に入って面白かったりするとうれしいですね。劇団の若い人には年に200本くらい見続けて、3年くらいたてば何か感じるようになる、と話している」と柄本明さん |
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「1日に1回は映画を見たい」と思うほど映画や芝居が大好きな演劇人、柄本明さん(61)。テレビや映画、それに舞台、さらに志村けんとのコントでの絶妙なコンビぶりなど、その独特の存在感には定評がある。「今は、ドラマが低迷している時代」と憂える柄本さん。その柄本さんが12月に放映されるドラマ「一応の推定」(WOWOW)で職業倫理と人情のはざまで揺れる定年間際の保険調査員を演じた。
ことしは松本清張生誕100年。ドラマはそれにちなんで松本清張賞受賞作品の広川純「一応の推定」(文藝春秋)を原作に制作された。山形県の田舎で起きた1人の老人のれき死は自殺だったのか…、その死を柄本さん演じる保険調査員が調べるうちに老人の死の背景にある複雑な事情や人間模様が浮かび上がってくる。
「WOWOWのドラマは今回で4本目だが、いつも挑戦的な作品。自由に作れるので正面から大きく取り組める。役者をしていてこういうドラマに出られるのは喜び。僕も普通に仕事をしていれば(ドラマの保険調査員と同じ)定年ですから」と柄本さん。役の上の人物と自分が重なり合う部分を感じている。そのあとニヤリと、「もっとも、役者は定年もない代わり潜在的な失業者」と付け加える。
いったんは就職
1948年生まれの柄本さんは団塊の世代。映画の話しかしないような両親の下で育ち、小学校入学のころには1人で映画館に通っていたという。子どものころのスターは笛吹童子の中村錦之助(初代)。当時1日で3本立てを5回くらい見ていた。そのままスンナリと俳優になったのかというとそうではなく、都立の工業高校卒業後、精密機械の商社に就職しサラリーマンに。しかし2年後、劇団の門をたたく。
「役者はやめられない」
「やはり時代ですね。ちょうど学園紛争が激しくなり、よくアングラ演劇なんかを見に行った。それがかっこよく見えたんだな。役者になるというよりも、自分はあの場所に行かなくちゃいけないと思った」と柄本さん。
即興で芝居も
金子信雄が主宰する新演劇人クラブ・マールイや串田和美の劇団自由劇場(現オンシアター自由劇場)に参加、本格的に俳優の道を歩む。ただ、劇団に所属したといっても給料が出るわけではない。生活費はアルバイトをして自分で稼ぐ日々。そのころ、よくNHKの番組で大道具係をやっていたという。
自由劇場で、後に自らが主宰する劇団東京乾電池の創立メンバー、ベンガルや綾田俊樹などと知り合う。また、よくコンビを組んでいた笹野高史とは即興で芝居をやったが、けいこを見ている仲間が毎回爆笑するほどの出来で、この時「この仕事は水に合っているのかなと思った」という。
その後、活躍の場を舞台だけでなく映画やテレビに広げた柄本さんは、11年前の映画「カンゾー先生」で日本アカデミー賞最優秀主演男優賞を受賞するなどめざましい活躍を続ける。
うれしい還暦祝い
また、団員が60人を超える東京乾電池は今年創立33年。「若い人に(役者になることを)勧めない。食えないから」と柄本さん。「それでも役者が面白くてやめられない」という人でないと続かないことを知っているからだ。昨年、生活が楽ではない団員たちから還暦祝いで赤い電動自転車をプレゼントされたことがうれしく、都内を乗り回している。
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「一応の推定」
20日(日)午後10時10分、WOWOWで放映。放映時間112分。
問い合わせ:WOWOWカスタマーセンターTEL0120-580-807
http://wowow.co.jp/(外部サイト)
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