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「岸壁の母」の1場面。端野いせさんを演じる加藤座長(左)。右は兵隊役の高島哲夫さん(79)
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9年間で400回公演 高齢者施設など訪問
「笑いと涙の無料出前芝居」をキャッチフレーズとして越谷市を拠点にボランティアで演劇公演活動を続けている尾上劇団。県内各地はもとより近県の高齢者施設や養護施設、温泉施設を訪問し無料公演を続けている。「瞼の母」「岸壁の母」「九段の母」などの人情味あふれる演目で笑いと涙を届け続け10月末でその数は400回となった。座長の加藤和子さん(65)は「夢中でやってきて、気づいたらもう400回目になっていました」と感慨深げだ。
尾上劇団は越谷市で理容業を営む会長の丸山幸男さん(65)、宮代町在住で、本業は着付け学院院長の加藤座長はじめ県内在住の男女約80人で構成、団員のほとんどが定年退職した人たちだ。役者だけではなく現役時代の経験や技術を生かし舞台装置や結髪師などスタッフとして協力する人も多い。
丸山さんは1972(昭和47)年から児童養護施設や障害者施設などに出張し、無料調髪のボランティアを続けていたが、あるとき施設の入所者が「歌や芝居も見たい」と言ったのを耳にし、苦手だったカラオケにも挑戦、練習した結果、いまやプロ並みの腕前となった。
劇団旗揚げのきっかけとなったのは、丸山さんやカラオケ仲間が旅行先でたまたま見た芝居が、幸か不幸かあまり名演ではなかった。「自分たちにもできるのでは」と、2000(平成12)年に5人で劇団を結成、仲間の父親が昔座長をしていた劇団の名を継ぎ尾上劇団が誕生した。
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加藤和子さん
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「常に全力投球」が信条
とはいえ、はじめのころは慰問に行っても芝居にならずせりふも棒読みで冷汗の連続だったという。けいこを重ね慰問公演を続けた結果、県内外からの出演依頼や各方面からの感謝状が届くようになった。
加藤さんが入団したのは02年、劇団の着付け担当だった知人が公演直前に入院、ピンチヒッターとして手伝ったのがきっかけだ。知人は退院しても体力不足を理由に復帰せず加藤さんが引き継ぐことになった。「演劇の着付けは普通の着付けと違いますので彼女に教えをこい、必死に勉強しました。彼女には本当に感謝しています」という。
「え?着付け担当として入団して座長?」といぶかる記者に加藤さんは「フフフ…、これもまた偶然ですが役者が急病で出演できなくなり、代役で仲居をやったのです。あまりせりふもなかったのでできましたけれど。あれが初舞台ですね」と笑う。以来役者として活躍、前座長に「2代目を」と言われ固辞したが押し切られ、05年に2代目座長に就任した。
丸山さんや加藤さんは「素人だからといって、手抜きはしない」がモットー、常に全力投球だ。ただし、あくまでもボランティア活動なので団員に対しては無理強いはしない。できる範囲内での協力でいいという。加藤さんは「夫や団員をはじめ周りの人たちに恵まれ、助けられて活動を続けていられる」と感謝する。
前県知事の故土屋義彦さんも知事退任後、本人の強い希望で同劇団に入団、ハーモニカ演奏で観客を沸かせたという。加藤さんは「土屋先生の演奏はいつも温かく周りを包んでいました」と述懐する。
加藤さんは取材中何度も「みなさんもぜひこの有意義な活動に参加していただきたい」と力説、定年世代の入団を呼び掛けた。
問い合わせはTEL090-5529-7946 |
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