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「1年364日は畑にいる」と北岡さん
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比企郡滑川町、国営武蔵丘陵森林公園のすぐ近くに「埼玉元気農業塾」という農場がある。現役時代は県職員として農林行政一筋に携わってきた北岡美明さん(63)がその経験や知識をもとに、農業に新規参入する人たちのサポートをしようと主宰する農業体験場だ。
定年を機に計画実行 荒れ農地を1年かけ整地
北岡さんは、在職中「農地がなかなか借りられない」、「就農研修は受けたがその後のフォローをしてくれる人がいない」など不安を持っている人が多いことを知り、その手助けをしたいと計画を温め続け、定年を機に実行に移した。
3年前北岡さんが知人から借り受けた遊休農地は約1ヘクタール、身の丈以上の雑草や桑の木、樹齢30年以上の木が生い茂り、奥の民家からは道路が見えないほどだった。その荒れた土地を約1年かけて一人で整地した。現在はビニールハウス2棟が併設された立派な農場になっており、そのころの面影はない。「まさに『開墾』でしたね。始めは道具もなかったのでノコギリで木を切ったのですよ。あのビニールハウスも一人で建てました」という。自宅から農場までは、車で片道30〜40分かけて通って来る。
「感動する心を大切に」
「まあサラリーマンの延長みたいなものですね。しかし、1年のうち休むのは元日くらいで、364日は畑にいます。雨が降ってもやることはあるし」と話す。
農業塾は、農業に新規参入希望する人たちを受け入れ、生産から販売までを研修・体験してもらう。期間は定めず、その人に任せている。
北岡さんは「定年退職後に『のんびり農業でもしながら暮らせたら』と考えている人も多いのですが、そういう人は途中で飽きたり、奥さんに反対されたり、今さらこんな苦労しなくても、などと長続きしません。どちらかというと若い人の方が頑張るかな」と、われわれには耳の痛い話もする。
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談笑する北岡さんと研修者 |
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「農業を始めても3〜4年は収入は期待できません。しかし農業に意義を見出す人には協力もしますし、仲間作りの手伝いもします。独立したらネットワークを組んで相互協力をしてもいいし、ここで一緒に農業をやってもいい。いろいろな形態がありますよ」という。
北岡さんの畑には熊谷市の養護施設の児童が月に1度農作業に来る。「ジャガイモや、枝豆の種をまいて収穫、試食までを体験します。実に生き生きと、楽しそうに作業をしていますよ。また調理師専門学校や高校から体験の申し込みもあります」という。
「ここの畑も、今でこそ作物を少し出荷できるところまでこぎつけましたが、まだまだ出費の方が多いです。ほとんどボランティアですね」という。
「そこまで苦労して何か楽しいことでもあるのですか」と尋ねると「まあ、ここにいること自体が楽しい。われわれは土や野菜の持っている生命力の手助けをしているだけです。作物を味わって感動する心が大切ですね。私も現役時代はメタボ気味の体のあちこちに不調を抱えていましたが、今はとても快調です。土や空気、緑や風、何が良かったのかは分かりませんが」と浅黒く日焼けした顔をほころばせた。
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埼玉元気農業塾
問い合わせ:TEL090・2744・6602 |
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