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「年をとっても集中力や瞬発力は衰えない」と蜷川さん
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演出家で、彩の国さいたま芸術劇場芸術監督の蜷川幸雄さん(73)率いるさいたまゴールド・シアターの第3回公演「アンドゥ家の一夜」が18日(木)〜7月1日(水)、彩の国さいたま芸術劇場(JR与野本町駅徒歩7分)で上演される。人生の終えんを目前にした男と、彼を取り巻く人々を独自の視点で見つめ、世の不条理と人間の愚かしさ、たくましさを描くブラックファンタジーだ。
さいたまゴールド・シアター「アンドゥ家の一夜」18日から公演
蜷川さんの発案で2006年に結成されたさいたまゴールド・シアターは、1200人を超す応募者の中から55歳以上48人を選抜し発足、現在は男性16人、女性26人、平均年齢70歳、最高齢83歳という演劇集団だ。
蜷川さんは結成の理由を「1つは演劇の構造を変えてみよう、職業的俳優が作る舞台が本当に優れているのか。人生経験を積んだ人間には別の表現があるかもしれないということ、もう1つは老いを迎えた人たちが1度リセットして違う人生を生きる可能性があるのではないか、という2つが動機です」と話す。「ただ、職業的俳優は訓練ができているが“ゴールド”の場合は、もうちょっとセリフを覚えられたらという記憶力の問題と、しゃべりながら同時に自然に演技をやらなきゃいけない俳優としての問題の2つを抱えています。職業的俳優ではないからすぐに結果が出なくてもいいが、いつまで待てばいいのか、どこかで見極めをつけなければいけない。ときには薄氷を踏む思いで怒鳴ったり、役を変えてみたり。1対42ですからね、それは疲れますよ。何でこんなことをやっているのかと自分でも思います(笑)」。
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細かく演技指導をする蜷川さん |
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「作家の友情に感謝」 若い世代の贈り物大切に
「また、老いは自分の事としても引き受けなければいけない。自身の体力とか感性とか芸術的な面でどこまでやれるのかという境界線を見つける必要もある。やってみて分かったことは、集中力や瞬発力は老いには関係ない。衰えるのは持続力かな、ウン」と自分でうなずく。
今回の上演作品「アンドゥ家の一夜」は、2007年の第1回公演「船上のピクニック(作:岩松了)」に感激した劇作家・演出家のケラリーノ・サンドロヴィッチさん(46)が、蜷川さんからの新作執筆依頼を快諾し実現したものだ。
蜷川さんは「ケラ(リーノ・サンドロヴィッチ)が、社会的には無名の老人たちのために人物A、B、Cではなく固有名詞を持った役を書いてくれることは最高の友情だと思う。若い才能ある作家が関わってくれることに喜びを持ってきちっと向き合い、恐れ敬まっていかなければいけない。年をとるとそういう感覚がマヒしていく。違う世代のプレゼントを大切にしなければ」という。
練習を見せてもらったが、1場面1場面にかなりの時間を費やす。蜷川さんは「裏声はダメッ」、「もっと早く動いて!」、「みけんにしわ寄せてしゃべらないで」などと何度も何度もダメ出しをする。さらに「こうやった方がいい」と自ら演技をしてみせる。高齢の役者は階段を上ったり下りたりたちまち大汗だ。蜷川さんは「アハハ…○○さんすごい汗だな、暑かったら上着脱いでいいよ」と心遣いも忘れない。最高齢の重本恵津子さん(83)は「激しいけいこも悪くないし楽しい。昔を思い出して懐かしい。公演前の緊迫感は大好き」と笑顔だ。
公演まであと約半月と迫った。蜷川さんは「泥の中をはい回っている気分だよ、でも泥の中からあのきれいな蓮の花が咲くんだ。どんな花が咲くかな」とにっこり笑った。
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さいたまゴールド・シアター「アンドゥ家の一夜」
問い合わせ:彩の国さいたま芸術劇場TEL048-858-5511 |
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