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「古民家に郷愁感じる」と駒宮さん
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「景色」にもこだわり
川口市在住の駒宮洋さん(63)は、趣味でかやぶき屋根の古民家模型や昆虫模型を制作し、充実したセカンドライフを過ごしている。駒宮さんの自宅を訪ねると工房はもちろん玄関から居間にいたるまで実物の40分の1の白川郷・合掌造りの古民家をはじめ、細部まで忠実に再現されたさまざまな古民家模型や、今にも動き出しそうな昆虫たちが並んでいる。
現役時代は建築関係の仕事をしていたという駒宮さんが、かやぶき屋根の古民家模型を作り始めたのは「生まれ育ったのが県内の田舎のかやぶき屋根の家でしたから、郷愁を感じるのでしょうか、気持ちが落ち着くし好きですね。折にふれてかやぶき古民家を見て歩きました。10数年前、旅先で見たかやぶき古民家をモデルに自己流で作った模型を見た妻が『本格的にやってみたらどうか』と勧めてくれたのがきっかけです」。以来、すっかりのめりこんでしまった。
旅先などでかやぶき古民家を見かけると、管理している人や住んでいる人の了解を得て、家はもちろん、納屋、馬小屋、井戸、いろりなどをメジャーで測らせてもらう。一緒に旅行する夫人の節子さんは「夫が測っている間待っているのは大変ですが、楽しそうな表情を見ていると、まあ仕方ないかと付き合ってしまいます」と笑う。
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合掌造り古民家の模型 |
採寸したものを基に図面起こしから始め、市販の細い木材や農家で分けてもらったワラなど使い、外観はもとより戸や障子、畳まですべて実物の40分の1のサイズで制作する。「戸や障子を開け閉めできるのはもちろんですし、内部も忠実に作っていますが、私が重視するのは家の周りの木や畑などを含めた全体の『景色』です。見る角度によって景色も変わります。正面だけではなく横からでも裏からでも、見る人が自分の好きな景色を見つけてほしいですね」と言う。確かに、駒宮さんがこだわりを持って配置した犬やニワトリ、梅や柿の木、野菜畑などが家を引き立て、のどかな景色が広がっている。
その花や犬がティッシュペーパーでできていると聞いて驚いた。「こうやって作るんです」とティッシュペーパーをちぎったと思ったら数秒で1センチほどのニワトリを作り上げた。実に器用で素早い。
ティッシュペーパー製のチョウ
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それだけではない。古民家模型とは別に、工房のあちこちのケースに入っているリアルな昆虫も材料はすべてティッシュペーパーだ。
気分転換に昆虫模型も 材料はティッシュペーパー
古民家1軒を作るのに半年ほどかかるが、そればかりだと飽きるし疲れる。気分転換を図るためと、昆虫が好きということで2年ほど前から作り始めたという。モデルは飼っているイナゴ、鈴虫、カブトムシなどだ。これも実寸通りに図面を描くことから始める。
材料にティッシュペーパーを選んだ理由は「1枚だと薄いが、張り合わせると厚くなる、丸くもできるし、細くも、長くもできる。どんな色にも染められる。どのように使おうかと想像がどんどん膨らむでしょう」と楽しそうに話す。
工房にはミリ単位の角材、紙製の花びら、昆虫の触角用のコヨリなどが所狭しと置いてあり、くしゃみもはばかられるような中で細かい作業を苦も無くこなしていく。
古民家も昆虫も、ホテルや高齢者施設などの展示用に貸し出している。「売ってほしいとよく頼まれますが、売りません」と愛着を持っている。
次に手掛けたいものを尋ねると両手で直径25センチほどの輪を作り「いつできるか分からないけど、このくらいの切り株をティッシュペーパーで作りたい」と目を輝かせた。
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