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昨秋行った公演の1場面「どどいつ問答」 |
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三昧に合わせて 都々逸うたう 友と励んで十六年
江戸時代から多くの人にうたわれてきた都々逸は庶民の本音と心意気のうたといわれているが、今日ではほとんど耳にすることもなくなった。全国的には都々逸の作詞をするグループや個人は大勢いるが「うたう」グループは極めて少なく春日部市の「都々逸を楽しむ会」は「うたう」に力点をおいて活動を続けている。
〈♪へんじ〜ン〜ンンど〜オし〜が〜アはなし〜イを〜オオオしてる〜ウ〉
今日の課題の都々逸「変人同士が話をしてる 不思議と話がまともです(鎌形みのる)」を、会の主宰であり師匠でもあるどどいつ寿範さん(59)の三味線に合わせてうたう。ひらがな、カタカナや線で音の高低や節回しを表した譜を見ながらうたうのだがなかなか寿範さんのお手本通りにはいかない。
寿範さんが「4節目の〈まとも〉の部分は〈まとも〜〉と伸ばさないで、身を乗り出して話すような感じで短く、そして一呼吸あけて〈でエエエ〜す〉とうたってみましょう」と具体的に指示する。何回か練習を続けるうちにバラバラだった節回しもそろい、表情にも余裕が出てくる。
会の発足は都々逸が廃れていくことに危機を感じた寿範さんが、奔走し1992(平成4)年にその保存、普及、振興を目的に春日部市の広報紙で呼び掛けたのがきっかけだ。月2回60〜70歳代の男女22人が市内の公民館で練習を重ねている。
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笑顔で指導するどどいつ寿範さん |
会長の岡部吾さん 2回の作詞大賞受賞
昨年11月には第8回「都々逸を楽しむ会」公演を行った。都々逸界最重鎮・谷口安閑坊氏、都々逸ペンクラブしぐれ吟社主宰・吉住義之助氏、寅さんファンクラブ会長・松井寿一氏らが応援にかけつけ、ユーモアあふれるスピーチをしてくれたことに、寿範さんが「夢のようです」と涙ぐむ場面もあった。
「うたう」に力点をおいてはいても作詞の勉強も怠らない。都々逸は正調7・7・7・5(8・7・7・5などの破調もある)の言葉でつづる文芸だ。
会員たちの初の作品集「初名乃里 珍撰ど・どいつ集」からいくつか紹介しよう。
「吹きっさらしの列車の窓に愛の言葉を息で書く(岡屁薫風)」。これは(ふ・れ・あ・い)という言葉を音節の頭に折り込んだ折り込み歌で第18回の都々逸全国大会で作詞大賞を受賞した会長の岡部吾さん(79)の2回目の受賞作品だ。
そのほか「友は大海マグロを語るわしは鰯のままでいい(安達へぼ麻呂)」。「悩み分け合うか弱い妻は俺をしりめによく眠る(西乃澤のぼり亭)」。「送別宴会世辞などきいて定年間近につぐ手酌(小の野当世忘)」などの共感を覚える作品が並ぶ。
活動歴13年の森本チトセさん(69)は「長いだけでなかなか上達しません。時々風呂でうたの練習するのですが、高校3年生になる孫が聞き覚えて、よくうたっていますよ」と笑う。
最も若い関根貴代子さん(60)は、三味線、コントラバス、フルートなどをこなす多彩な趣味の持ち主だが、「この会の発足当時から参加しています。私は楽器を弾くことが大好きでいろいろやっていますが、ここへ来ると気持ちがホッと安らぎます」と話す。
和気あいあいとした雰囲気、寿範さんの三味線や、うたい出しを促す「ハッ」という魅力的な声も心地良い。
最後に、よく知られた都々逸をご一緒に。
「ざんぎり頭をたたいてみれば文明開化の音がする」「白だ黒だとけんかはおよし白という字も墨で書く」
どどいつ寿範さん
問い合わせ:TEL048-736-0688 |
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