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子どもに伝え続ける 自然を大切にする心 鳩ヶ谷市/鎌奥哲男さん |
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昨年末に自然塾トンボクラブ結成10周年の本を出版し、手にする鎌奥さん |
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上野動物園元職員が自然観察塾主宰
動植物の生態を学ぶことを通じて、子どもたちが自然を大切にする心をはぐくんでほしい—。鳩ケ谷市里の鎌奥哲男さん(77)は東京の上野動物園を定年退職後、自宅近くの休耕地を整備して動植物の生態を観察する湿地生態園「トンボ公園」を手掛けた。1995(平成7)年には小学校3年生以上を対象にした「自然塾トンボクラブ」を立ち上げ、公園で子どもたちに自然の大切さを伝えている。
地域の小学生と昆虫採集や野草観察
"学校で教えないことを教える"が鎌奥さんの教室のモットー。「例えばかまの使い方や草の刈り方など、むやみに草を刈っても昆虫の生態を壊すだけ。『この種類の草の根にはこういう昆虫がすんでいるんだよ』と実際に子どもたちの目の前で教えることが大切」
上野動物園に勤務している時から「定年後は今まで動植物に携わってきた自分の知識を生かして何かできたら」と考えていた。休耕地を整備し始めたのは定年後の94年。農家から約千平方メートルの土地を借りて井戸や沼地、草地を造ると、メダカやチョウ、カルガモといった多くの生き物がすみつくようになった。
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ザリガニ釣りをする子どもたち |
「これは子どもたちが自然と触れ合う格好の場所になる」。そう思った鎌奥さんは地元の子どもたちに生態園を開放。その後、自然観察塾「自然塾トンボクラブ」を立ち上げ、昆虫採集や野草採取などを行いながら子どもたちに動植物の生態を教え続けてきた。「今大人たちは子どもに自然の大切さを教えているが、実はその大人たちが自然を破壊している。そんな矛盾もこのトンボ公園を手掛けたきっかけ」と鎌奥さんは話す。
「トンボ公園」の「トンボ」は「田んぼ」から。鳩ケ谷周辺はかつて自然豊かな水田地帯だったことを多くの人に知ってもらいたく、当初は田んぼ公園と名付けた。しかし「田んぼよりトンボの方が格好良いかなと思って。それにトンボだと子どもたちに親しみを持ってもらえるしね」
昆虫採集をする子どもたち |
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03年に公園は区画整理のため埋め立てられたがクラブは今も存在し、現在会員は中学2年生から高校3年生まで15人。毎月1回、鳩ケ谷市西公民館で鎌奥さんと15人の会員が講師になって、小学生を対象にした自然観察教室を開催している。「難しいのは子どもに何か聞かれたからといってすべて答えを教えては駄目。子どもたちが自分で観察し、図鑑と見比べながら野草や昆虫の特色を覚えるように手助けする。自分で考えて学んだことは、子どもも忘れないはず」
3月になり暖かい日も次第に増え、多くの動植物も活動を活発化させる。
「昔はねえ、この鳩ケ谷周辺には多くの自然があって、春になれば友人と野原を駆け回ったもの」。しかし今は地下鉄の開業で駅前には高層ビルが建ち並び、往時の面影はない。「やっぱり自然がなくなっていくのは寂しいね」。鎌奥さんはぽつりと言う。「最近騒がれている地球温暖化や大気汚染なども少なからずこういった自然の破壊が影響しているのでは。そうした現状を少しでも子どもたちに理解してほしい。それがわたしの最大の願いです」
『自然塾トンボクラブ』
問い合わせ:
TEL:048-282-2434(鎌奥) |
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