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昨年末に自然塾トンボクラブ結成10周年の本を出版し、手にする鎌奥さん |
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世界を旅する隻眼カメラマン
わたしが片目で見た世界を写真に残したい−。難病を患い右目の視力を失いながらも、世界各国を旅して写真を撮り続けるさいたま市岩槻区の長濱保之さん (63)が、6日から浦和区の県立近代美術館で写真展を開催する。公務員を定年後、退職金を利用して5カ国を巡り、その際に撮り集めた写真の中から厳選した約60点を展示する。長濱さんは「ファインダー越しに眺めたその国々の文化や風習、そして人々の生活を写真から感じてもらえたらうれしい」と張り切って話す。
埼玉県庁に勤務していた長濱さんは35歳の時、突如病魔に侵された。「ある日、目の前が急に真っ暗になってとても立っていられない状態。せん光のような白いものがチカチカと見えて、急に具合が悪くなりました」。何げなしに右目に手をかざしたら目の前は真っ暗で何も見えない。「これは大変な事になった」。すぐさま眼科へ駆け込むと診察の結果は「中心性脈絡網膜症」。思いも寄らない難病だった。
「振り返ると何となく思い当たる節はあったんです」。仕事も忙しくなり、ストレスを強く感じるようになったのがちょうど30代半ば。睡眠時間は減る一方、酒の量は増えた。「そりゃあもう病名を聞いた時は絶望感でいっぱいでした。なんでおれがこんな難病にかかるのかと…」。ちょうどその時、妻のおなかには2 人目の子どもが宿っていた。
難病と闘いながら夢実現
その後3度の手術を行い、定期的に通院するが、担当医からは毎回「現在ではもう施すすべがない」と同じ答え。「だからといって後ろばかり見てはいけない。努めて『前向きに、前向きに』と自分に言い聞かせながら生活していました」
仕事にも復帰した長濱さんは48歳の時、写真と出合う。「ある日、自宅の庭を何げなしに眺めているとシャクナゲの木が5メートルにもなり、いくつもの花が見事に咲き誇っていて。あぁこの美しい姿を肉眼でずっと眺めていたいなあって」。そんな一心でカメラを手にして以来、すっかり写真にのめり込むようになった。
長濱さんの写真のモットーは「生活臭のある」写真を撮ること。レンズの向こうに見える人々、風景、建物、文化…。「例えば、夕食の準備をしている民家の台所から湯気が立っている写真や母親が家族の洗濯物を干している写真など、写真を通じてその国々の人々の生活を伝えたいですね」
当面の目標は中国から西アジアに達するシルクロードを旅して、写真を撮ること。担当医からは「いずれ両目が失明する可能性もある」と既に宣告され、今でも時々左目が見えなくなる瞬間があるという。常に恐怖とは背中合わせだが、「いつまでもくよくよしていたらしょうがない。片目がまだ見える限りは多くの文化を体験してシャッターに収めたいですね」。
★長濱保之写真展〜私の外遊日誌〜
長濱さんがタイ、中国、イタリア、カナダ、トルコなどを旅しながら撮り集めたカラー写真約60点を展示。
期間 : 6日(火)〜11日(日)。入場無料。午前10時〜午後5時半。
場所 : 埼玉県立近代美術館(JR浦和駅徒歩3分)。
問い合わせ(TEL)048-757-9079(長濱) |
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