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  千葉版 平成24年12月号  
珍しい“仕覆の展覧会”  多古町の稲葉祥子さん

「叔父から譲り受けた骨董に仕覆を着せてやりたい気持ちが強くなりました」と稲葉さん
 「普段は茶事における脇の主役であって、道具を保護し引き立てる役割の仕覆です。仕覆作りは地味な仕事です」と満足げな表情で話すのは珍しい“仕覆の展覧会”を開催している香取郡多古町の稲葉祥子(いなば・よしこ)さん(68)。「その道具に合わせて布地を選択する時のわくわく感や布地にはさみを入れる時の緊張感、制作過程のどきどき感、そして完成した時の達成感はなんともいえない爽快な気分になります」と話す。

ひとつひとつ心を込めて制作
 稲葉さんは長い間、下着のデザイナーやアパレルメーカーにプレゼンテーションなどの仕事をしてきた。

 仕覆を作りはじめたきっかけは、骨董取集を趣味としていた映画俳優で叔父にあたる稲葉義男さん(1920—98)から道具を多く譲り受けた。

 「俳優仲間内では骨董取集でもちょっと名前が知れていました。譲り受けてた道具の中には箱も仕覆もない裸の茶道具が多くあり、時代を生きてきた赴きある道具がガラクタになりかねないと思いました。そこで道具に仕覆を着せて箱に納めてやりたいという気持ちが強くなりました」と当時を振り返る。

 そして21年前に袋物師の永井百合子さんの門をたたいた。仕事の合間にこつこつと仕覆作りに乗り出した。

完成時の達成感に喜び
 もともと仕覆は茶の世界では重く扱われていて、その作り方は一子相伝のものといわれている。使われた布地も中世から近世初期にかけて主に中国から伝来した織物の名物裂(めいぶつきれ)といわれる貴重なもの。

 名物裂は今ではほとんど手に入らないといい、日本の古い裂地のほか、稲葉さんはプライベートで海外旅行に行った際にアンティークショップで珍しい布地などを買い集め、そうした布地で道具の格式や趣に合わせて仕覆を作るという。

 「仕覆は寸法と仮縫いをしっかり取ります。貴重な布地ですので、寸法を間違えてはさみをいれると無駄になりますので。2日間で作れるものがあれば、一度作ったものも道具にそぐわないときには作り直すこともたびたびあります」

 「今回の展覧会は個展としては初めてで20年ひと区切りとなります。一針一針心を込めて縫い上げた作品のいとおしさは格別のものがあります。当初100点を展示する予定でしたが、結局113点に上りました」と大変珍しい仕覆の展覧会にぜひ足を運んでほしいと稲葉さんはいう。

◆稲葉祥子・茶の袋物展  〜和の美・名物裂・茶道具の仕覆〜
 23日(日)まで松山庭園美術館(JR八日市場駅からタクシー)で。

 日本の古い貴重な裂地のほか、海外旅行の際に買い求めた珍しい布地などを使用した茶器、茶わんのほか水屋道具の仕覆など展示。一般800円。金・土・日・祝開館。TEL.0479・79・0091

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