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ハンディ越えてパソコンに絵画 流山市/戸谷勝國さん |
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パソコンに向かってボールマウスを操り創作活動に精を出す戸谷さん |
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動くのは2本の指 ボールマウス操り
還暦を迎えた2004(平成16)年6月に難病を発症、今では全身の中で自由に動かすことができるのは右手の親指と人差し指だけ。流山市東深井の戸谷勝國さん(65)はそんな絶望の淵から生きがいを与えてくれたのがパソコンのボールマウス。「親指でボールマウスを操り絵を描くのです。毎日夢中でパソコンに向かっています」というのは妻の礼子さん(59)。この1年描いた作品を集めた2回目の個展「パソコンマウスのゆめ展」が12日(土)、13日(日)に流山市の森の図書館で開かれる。
12、13日に個展
60歳になって突然降りかかってきた障害。「最初、歩行がおかしい、多少ろれつが回らないなどの症状が出てきたのですが、1年間は病名が分からなくて」と礼子さん、そして明らかになったのが筋肉が徐々に縮む筋委縮性側索硬化症(略称=ALS)。病状は急速に悪化。歩行はのみならず話すこともできなくなった。
「呼吸もままならず、発症から1年半後には人工呼吸器での生活となりました」と当時の日々を振り返る。唾液(だえき)を自動的に吸い取る持続吸引機も口にくわえている。入院しているときに病院の職員からボールマウスで絵を描くことを勧められた。もともと油絵が趣味で絵心もあり、早速キャンパスならずパソコンに向かいマウスを絵筆代わりに絵画制作に打ち込む日々となった。
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戸谷礼子さん |
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「故郷の長野県の風景や花々、南の島の風景など最初は1週間で1枚仕上げていました。最近は病状も進み、大作ですと1カ月かかることもあります」と礼子さん、それでも日曜日などは13時間もパソコンに向かうこともあるという。
最近はより細かい描写が増えてきたといい、2本の指から繰り出される絵画は明るい色彩、温かい筆致で心が洗われる作品が多いと礼子さん。
昨年は個人で森の図書館のギャラリースペースが借りられないために、戸谷さんを支えるヘルパーや看護師らが戸谷さんの故郷・旧鬼無里村の地名にちなんで鬼無里(きなさ)会を急きょ発足、展示会を行った。今回は事情を知った森の図書館が共催となっている。
明るい色彩、温かい筆致
チラシや展示会の準備など側面から支援しているのはおいの中村俊之さん。
共催を職場に呼び掛けた司書補の高橋道子さん(60)は「戸谷さん夫妻は2人とも明るく前向きです。戸谷さんの少し動かす笑顔がとてもすてきです」と寝たきり生活での創作活動に刺激を受けるという。
戸谷さんのコメント(抜粋)。
受賞した「真夏の夜の夢花火」 |
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「お会いできてもお話はできませんので許してください。自分で言うのもおこがましいのですが顔はまあまあだと思い込んでおります。私に出来ることは? 今は絵しかありません。週に一度、散歩で近くの公園を見に行きます。古墳公園です。車いすはリクライニング、見えるのは空と木の枝。花は低い所に咲いていると、近づいて見ても2メートルくらい離れてしまいます。でもきれいなんです。パソコンのソフト(ペイント)とボールマウスを使い、描いています。ボールマウスは私のような障害者には、とても便利です。ドキュメントにある写真などを並べてみて、創造して描きます。文字入力はIMEパットを利用するので苦手。時々、間違っても直さない不届きな奴です。正義の味方失格ですね」
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◆パソコンマウスのゆめ展「かっちゃん」の個展
08年度社会福祉法人日本肢体不自由児協会主催の肢体不自由児・者の美術展でNHK厚生文化事業団賞を受賞した「真夏の夜の夢花火」をはじめ、約60点を展示。
日時:9月12日(土)・13日(日)
場所:流山市立森の図書館(月曜休館)
交通:東武野田線江戸川台駅からくりーんバスで
問い合わせ:TEL04-7152-3200 |
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