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印刷・製本作業に忙しい会員 |
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拡大写本をご存じですか?視覚に障害のある人は、普通の印刷物を読むことが困難。そのために大きな文字で読みやすく作り直すことを拡大写本という。「弱視の人が100人いれば100通りの見え方をしているといわれます。そのために一人一人の症状を聞きそれに合った教科書を作成しています」というのは四街道市で教科書をボランティアで提供している「拡大写本の会」代表の渡部洋さん(65)。「高校に合格しました、といった手紙をもらうとうれしくなってみんなますますやる気が出ます」と笑う。
パソコン使いハイテク写本
「全盲の点字教科書は比較的充実しているのですが、弱視の人の教科書は大いに不足しています」と話すのは1981(昭和56)年の会の発足当初からの会員・大井武子さん(74)。
「弱視者は単純に視力が弱いというだけでなく、視野が狭い、光がまぶしい、眼球が無意識のうちに動くなどがあります。したがって原本のイメージを生かし各個人の読みやすいように編集して製本します」と事務局の岸孝士さん(69)。
どんな形が読みやすいかは字の大きさはもちろん太さ、書体、字と字の間隔、行間などを考慮して作業を進める。写真や表、イラストも使用されているため、これらのレイアウトにも頭を悩ます。
「いまは小・中学生の国語・理科・社会(地理・歴史)・算数(数学)・英語の製本です。音楽などにはとても手が回りません。拡大鏡で苦労して勉強していることを考えると少しでも手助けしたいのですが」。物理的な壁があると渡部さんは悔しがる。「当然文字が大きくなるので1冊の本が3冊になったりするわけです」と岸さん、それだけに冊数が増えて学生は本の持ち運びに苦労している。
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右から渡部さん、岸さん、大井さん |
最高齢86歳 特技で生き生き
会は有志15人で市内在住の弱視者のため、手書きによる拡大写本で始まった。現在は女性28人、男性18人で弱視の子どもを持つ母親も参加している。会員は13のグループのどれかに入って活動する。92年にいち早くパソコンによる入力を始めたため、入力作業は自宅で行い、定例の月2回木曜日の活動は印刷・製本・発送などを行う。しかし2〜5月、8〜11月の繁忙期は毎週作業する。
工程は依頼者との打ち合わせから始まり、校正、データの修正など12工程に及ぶ。「教科書であるため特に校正は4度行い、慎重にも慎重を期してやっています」と大井さん。最高齢86歳の刀根悦三さんはシルバー人材センターでふすま張りや障子張りを教えている経験から背固め・小口張りなどを専門にしている。
英語や国語など教科書 |
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「04年に拡大教科書が国の買い上げ対象となり、会の活動も活発になり05年度は前年度のほぼ倍の112タイトル608冊、06年度は186タイトル1071冊となりました」と渡部さん。
「作業は山ほどあるのでこれから団塊世代の定年で時間に余裕がある人はぜひ手伝ってください」と大井さん、参加を呼び掛ける。岸さんは「子どもの喜ぶ顔を思い浮かべながら作業しています」と笑顔を浮かべる。
「ハイテク写本で全国をリードしています。もし写本グループを立ち上げる計画があるのであればノウハウを提供します」と渡部さん、仲間作りに手を差し伸べる。
問い合わせ : (TEL)043-422-5571 |
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