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いかつい顔をした小さな石仏が、目黒区八雲の東光寺境内にある。その名も「鬼の念仏」。子どもの夜泣きにご利益があるとの民間信仰が、いつの時代からか広がった。正面からは分からないが、折り畳んだ番傘を背負った後ろ姿が特徴だ。「どういう意味を込めたのか分かりませんが、珍しいですね」と大谷康憲住職。
東光寺は1365 (貞治4) 年建立の曹洞宗の古刹(こさつ)で、高級住宅街の中に、広い寺域を有する。ただ、2回にわたって火災に遭ったため「鬼の念仏」に関する史料は全く残っていない。「いつの時代に誰が造ったのかさえ、分からないのです」と大谷住職。高さは台座を含めても50センチほど。屋外にあるため表面は少し風化しているが、全体の造形は原形をとどめる。いかつい顔にびっくりして泣き止む子どもがいたためか、邪をはらうとの信仰が広がり、子どもの夜泣きに悩む母親らが大勢お参りに訪れた。今は、夜泣きという言葉をあまり使わなくなったせいか、戦後のベビーブームのころに比べると参拝の人は減ったという。
境内には「鬼の念仏」のほか馬頭観音や六地蔵など、石仏が多い。おそうじ小僧などユニークな石像も。境内の大イチョウは樹齢約250年。近くの常円寺境内にもほぼ同じ高さの大イチョウがあり、「夫婦イチョウ」として知られている。
『鬼の念仏』
場所 : 東急東横線都立大学駅徒歩7分 |
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