|
かつて多くの修行僧(行人)が出入りした目黒区・行人坂の大円寺(TEL03・3491・2793)。境内に一歩足を踏み入れると、左手のおびただしい石仏に圧倒される。江戸三大火事の1つ「行人坂大火」(1772年)で犠牲になった人々を弔う五百羅漢(らかん)など500体を越す石仏群。「とろけ地蔵」は、その手前に立つ。顔などは原形をとどめておらず、もともとの表情は分からない。
なぜ、これほど"とろけた"状態になってしまったのか…。とろけ地蔵は江戸時代、品川沖で猟師の網にかかったと伝えられる。住職の福田豊衍(ほうえん) さんによると、大火の火元は放火に遭った大円寺。波の浸食で傷んでいた地蔵像は強い火勢をまともに受け、すっかり表面が溶けてしまったらしい。ところがその姿から民間信仰が生まれた。すべての悩みを「とかしてくれる」との評判が、江戸時代後期には庶民の間に広まっていたと記録にある。
現在は悩み解消のほか、「縁を溶かす=縁切り」「がんを溶かして」など、1人1人が"とかす"にかけた願掛けをしているとか。
境内には火事の縁か、別の火付けで処刑された八百屋お七の「お七地蔵」もあり、こちらは縁結びのご利益があるといわれる。また、お堂には1193(建久 4)年作の釈迦如来像(国重文・ご開帳は1月1日〜7日など)をはじめ貴重な仏像が安置されている。
JR目黒駅から徒歩3分。 |
| |
|