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“働き方改革”で長期連載が実現 大岡信「折々のうた」 |
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 「折々のうた」全原稿稿本(神奈川県立神奈川近代文学館蔵) |
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1979年1月25日、「朝日新聞」創刊100周年記念日の紙面で「折々のうた」がスタートしました。古今東西の詩歌を、詩人・大岡信(おおおか・まこと、1931〜2017)の感性によって約180字で鑑賞するコラムです。新聞という多くの人びとが目を通す媒体で毎日、詩歌に触れる機会を提供するというのは世界でも例をみない試みでした。大岡は四季の移ろいを実感を持って読者に伝えるために、多く書きためておくことはあえてしませんでした。そのため連日、迫りくる原稿の締め切りにプレッシャーを感じながらの執筆となりましたが、より頭を悩ませたのは、本文執筆より詩歌の選択だったといいます。
新聞の休刊日以外、スタートから休載なく2年余り続けたところで約1年間休載します。これは当時勤務していた明治大学から休暇を得て、海外に長期滞在することになったためでしたが、常に緊張状態の中に自身を追い込んでいた大岡は、休養期間はおのずと必要になると考えていました。それは、読売新聞社外報部に10年間在籍し、不規則な勤務の合間を縫って自身の創作活動をしていた若き日の経験から導かれたものでした。以降は、大岡流の“働き方改革”を実践し、その後も約1〜2年ごとに連載と休載を繰り返しながら執筆。2007年3月31日まで足かけ29年、6762回の長期連載となりました。大岡いわく「いやはや これはこれは」。
ときには、既に掲載した詩歌を再び選んでしまい急ぎ書き直して送稿したことや、はたまた海外の滞在先から送稿することもありました。朝日新聞社パリ支局からファクシミリで送られた原稿もあります。こうして紡がれた詞華集(美しい詩文を集めた書物)「折々のうた」。懐かしくも、新鮮さを失わないその魅力にいま一度、触れてみませんか。
《神奈川県立神奈川近代文学館 和田明子》 |
◆ 特別展「大岡信展 言葉を生きる、言葉を生かす」 ◆
5月18日(日)まで、神奈川県立神奈川近代文学館(みなとみらい線元町・中華街駅徒歩10分)で。
国際的な詩人で、詩論、美術評論の分野でも活躍した大岡信の生涯と豊かな言葉の世界を、書や詩稿、日記のほか、多彩な芸術家たちと共作した書画など約400点の資料で紹介している。
観覧料一般700円、65歳以上350円。問い合わせは同館 Tel.045・622・6666 |
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