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普及に200年、紆余曲折も ジャガイモとヨーロッパ |
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フレデリック・ポリドール・ノッダー
《ジャガイモ》
1794年 個人蔵 Photo Brain Trust Inc.
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フィッシュ・アンド・チップスのチップスやマッシュ・ポテト、ジャケット・ポテトなど、今ではイギリスの食生活に欠かせないジャガイモですが、もともとは海の向こうのアメリカ大陸原産の植物です。イギリスをはじめ、ヨーロッパで広く食べられるようになるまで、実は長い時間を必要としました。
ジャガイモの原産地は南アメリカのアンデス地方。ジャガイモやトウモロコシ、トマトなどアメリカ大陸原産の食物は、1492年にコロンブスがアメリカ大陸に到達してからヨーロッパに伝えられました。ジャガイモも16世紀になってから、スペインを介してイギリスに紹介されました。
ジャガイモは寒さに強くやせた土地でも育てやすいため、エリザベス1世をはじめヨーロッパ各国の君主は庶民の食べ物として広めようとしました。フランスのルイ16世の王妃マリー・アントワネットがジャガイモを普及させるため、その花を髪に飾ったのは有名な話です。
しかし聖書にない食べ物であるジャガイモは、なかなか食べ物として流通しませんでした。特にジャガイモの芽や茎、葉、緑に変色した皮には、ソラニンという有毒成分が含まれています。イモを食べる風習がなかったヨーロッパの人々は茎や葉を食べ中毒症状を発症し、それがジャガイモの負のイメージとして長く定着したのです。とはいえ、やせた土地でも育てやすく栄養豊富なジャガイモは、18世紀から19世紀には一般庶民の食べ物として広まっていきました。
さて、SOMPO美術館では、食べられる植物を描いたボタニカル・アート(植物画)とともに、イギリスの食にまつわる物語を紹介する展覧会を開催しています。さまざまな野菜や果物、お茶、コーヒー、砂糖、ハーブやスパイスなど、「おいしい」ボタニカル・アートを通じて、イギリスの歴史と食文化をたどっています。
《SOMPO美術館上席学芸員・小林晶子》 |
◆ 「おいしいボタニカル・アート 食を彩る植物のものがたり
」 ◆
1月15日(日)まで、SOMPO美術館(JR新宿駅徒歩5分)で。
一般1600円(事前購入券1500円)。問い合わせは Tel.050・5541・8600 |
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