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ネフェルタリ王妃の墓の壁画に描かれた甲虫スカラベの顔をしたケプリ神(筆者撮影) |
ナイル川のほとりで豊かな自然に囲まれていた古代エジプト人は、周りに生きている生物たちをよく観察していました。自分たちのためになる動物、牛や羊の中に多産の姿を見ると、いち早く神として祭っています。
彼らを最も引き付けたのは、天空の高い所から地上の獲物を狙う猛禽類(もうきんるい)でした。王の化身となったハヤブサ神「ホルス」は“天”を表わす文字としても使われました。
また、人に役立つ“益獣”以外にも、当時の人が頭を痛めていた災難を鎮めるために神となった動物もいます。砂漠をうろつき墓の遺体を荒らしていた野犬を逆に墓の番人として祭った“ミイラつくり”の「アヌビス」や、ナイル川で襲われないようにワニも「ソベク」として神となりました。サソリの女神「セルケト」も同じです。
興味深いのは、砂漠をいく甲虫スカラベ(フンコロガシ)です。この虫を祭った神「ケプリ」は、たくさんの子どもが生まれる様子から“生じる”(「ケペル」)との意味を表す文字になっています。さらに、ふんの中に自らの卵を産み付けて転がしていく様子が太陽を持ち上げているようにも見え、最高神である太陽神ラーと同一視されました。そのためでしょう、幾多の装飾品が作られ、ツタンカーメンなどの王様の名前がスカラベ文様の意匠とともに刻まれた護符も発掘されています。
《古代エジプト壁画研究家 村治笙子》 |
◆ 「開けてびっくり!エジプトの動物神たち」 ◆
11月7日(月)午後2時〜5時、豊島区イケビズ(JR池袋駅徒歩7分)第1会議室で。
森羅万象を祭るエジプト神話では、たくさんの生物が神様として祭られている。当日は、日本オリエント学会会員で古代エジプト壁画研究家の村治笙子氏をゲストに招き、古代エジプト人の信仰の世界を動物、鳥、昆虫からかいま見る。後半はゲストを交えたお茶会も。
参加費2000円(お茶代込み)。問い合わせはアストライアの会・松原 Tel.049・258・3218 |
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