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定年時代
 
  ものしりミニ講座 令和4年5月下旬号  
家紋から見える暮らしと願い  植物と家紋

左:墓石に刻まれた片喰紋
右:カタバミの花と葉。紋の意匠に用いられているのは葉の方
 家紋は千年の歴史を持つとされ、平安時代に公卿の間で輿(こし)や牛車、衣服に好みの文様を用いたのが始まりとされています。

 その後、戦国時代には敵味方をはっきり区別するために、他氏とは違った標識(紋)が使用されました。江戸期になると、幕府は庶民にも家紋の使用は自由に認めています。これにより“お江戸”は、世界に類を見ない多くの優れたデザインを生み、その美を競うことになったのです。

 西洋にも紋章はありますが、デザインは動物を素材にしたものが多いようです。一方、日本の家紋は植物紋が多数を占めます。日本人が古来農耕を営み、花鳥風月をめでる国民性があったほか、季節ごとに移ろいゆく花たちは、諸行無常を説く仏教思想にも合っていたためではないかと考えられています。

 幾つか例をあげると、金閣寺の屋根に鳳凰(ほうおう)が飾られているように、中国の伝説では徳の高い君子が平和な世を築くとき、鳳凰が現れ桐(きり)の木に宿るとされています。そんなありがたい木ですから、桐紋は総理大臣紋章、パスポートなどのデザインにも使用されています。

 また雑草の片喰(かたばみ)は繁殖力があって、踏まれてもくじけない強さが子孫繁栄につながるとして、片喰紋は武家から庶民まで多くの家で使われました。蔦(つた)は周囲にまとわりつく力強さから、商人が商売繁盛を連想して、家紋にしたといわれています。

 このようにルーツをさかのぼって、なぜこの植物がこの家紋になったのか、調べて行くと当時の有職(ゆうそく)故実だけでなく、歴史の流れや庶民の暮らし、人々の願望までうかがい知ることができます。

《日本自然保護協会自然観察指導員 小原芳郎》

◆ 植物の暮らしズームアップ ◆
  6月30日(木)午後2時〜5時、豊島区イケビズ(JR池袋駅徒歩7分)第2会議室で。

 日本の歴史や風俗は、植物と切っても切れない関係にある。和服や墓石に使われる家紋もその一つ。当日は日本自然保護協会自然観察指導員・小原芳郎氏をゲストに迎え、植物と家紋の関係を取り上げる。後半はゲストを交えたお茶会も。

 参加費2000円(お茶代込み)。問い合わせはアストライアの会・松原 Tel.049・258・3218

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