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リュウキュウサギソウ 橋爪雅彦筆
1983年10月 個人蔵 |
ランは、祝い事に使われるコチョウランや、豪華な花を付けるカトレア、あるいは庭に咲くシュンランやエビネなど、なじみのある植物の一つです。一方、小笠原諸島や南西諸島には、分布が限られ、なかなか見ることのできないランが自生しています。
練馬区立牧野記念庭園記念館は現在、そうした遠隔の島々を中心に、各地に咲く珍しいランの植物画の企画展を開催しています。ここではそれにちなみ、ランの名称について書いてみましょう。ランに限らず植物には、地名や植物の形状に由来するものなど、さまざまな名称があります。地名でいえば、ムニンボウランやムニンシュスランなど、「ムニン」を冠するランがあります。これは無人島のことで、かつてそう呼ばれていた小笠原諸島を指しています。どちらのランも小笠原諸島の固有種です。
形状でいえば、花の形が鳥の姿に似ていることから名付けられたランがあります。サツマチドリ、アワチドリのようにチドリの名を持つものや、リュウキュウサギソウ(イトヒキサギソウ)のようにサギの名を持つものが見られます。それぞれに薩摩、安房、琉球の地名も付いています。イトヒキの名は、花弁が糸状に細かく裂けている特徴に由来します。また、イリオモテムヨウランやオキナワムヨウランのように「ムヨウラン」と呼ばれるものがあります。これは「無葉蘭」の意味で、光合成をする葉がないので、その名称が付いています。この二つにも西表(島)、沖縄の地名が入っています。
本展の作品は、石垣島(沖縄県)に暮らす橋爪雅彦氏によって描かれました。1981年ごろからランの描画に取り組んだ橋爪氏は、生育地や開花時期などの情報を得ることが難しいためランを自分で探して描こうと決意し石垣島に移住しました。こうしてできた作品のうち、本展では約60点の複製画を展示しています。
《練馬区立牧野記念庭園学芸員・田中純子》 |
◆ 企画展「石垣島からの花便り〜野生ランと橋爪雅彦〜」 ◆
3月27日(日)まで、練馬区立牧野記念庭園記念館(西武池袋線大泉学園駅徒歩5分)企画展示室で。
入場無料。火曜日休館。同館 Tel.03・6904・6403 |
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