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ジョージア映画「ピロスマニ」の1シーン。ピロスマニ(1862?〜1918)は「百万本のバラ」で歌われた、女優に恋する貧しい絵描きのモデルでもある。日本では1986年に大規模な展覧会(西武美術館)が開かれた |
ジョージア(グルジア)は、コーカサス山脈の南に位置する、歴史のある国です。東西交易の要所だったため、この国は古代から周辺諸国の侵略を絶えず受けてきました。しかし、人々は独自の言語と文字、宗教(キリスト教)、文化を心の礎にして、国を滅亡の危機から再生させてきました。
首都トビリシの丘にそびえる「母の像」は、この国の人々の心を象徴し、右手に敵を討つための剣を持ち、左手には友や客を歓待するための盃(さかずき)を掲げています。
人々は個性を重んじる一方で、伝統的なスプラ(ジョージア式宴会)では、タマダ(宴会の長)の下、心を一つにします。ポリフォニー(多声音楽)も有名。人が集まれば異なる歌声が束ねられ、力強い合唱となります。そして生活の根本には8千年の歴史があるワイン造りがあり、ワインは信仰と緊密に結びついているのです。
これらジョージアの文化・芸術は、互いに関係し、今も人々の生活になくてはならないものです。そして、そのことが最も顕著に表れているのが、この国の映画です。ソ連時代の政治的抑圧や独立後の混乱にも屈することなく、映画人は情熱を込めて自国の作品を製作してきました。ジョージア映画は人間味にあふれ、独創性においても、欧米の映画とは一線を画する魅力と奥深さがあります。
私は岩波ホールで長く世界の映画の紹介に携わってきましたが、1978年、放浪の画家の人生を清冽(せいれつ)に描いた「ピロスマニ」公開を機に、ジョージア映画に関心を深めてきました。退職して3年がたちますが、ますます日本の人たちに、この国の映画の素晴らしさを知っていただきたいという思いが募っています。
《画家、ジョージア映画祭2022主宰 はらだたけひで》 |
◆ ジョージア映画祭2022 コーカサスからの風 ◆
1月29日(土)〜2月25日(金)、岩波ホール(地下鉄神保町駅直結)で。
“映画の王国ジョージア”の旧ソ連時代に製作された歴史的名作全34本を上映。ジョージアを舞台にした日本のドキュメンタリー映画も。一般前売り1500円、同当日1800円、60歳以上1500円。同ホール Tel.03・3262・5252 |
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