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ツマグロヒョウモンの雌。
左上は擬態しているとされる有毒のカバマダラ |
地球温暖化に伴い、チョウたちもそれまでの生息地から北上しています。その代表格として挙げられるのがツマグロヒョウモンです。1980年代までは近畿地方以西にいたとされますが、冷涼な長野県で私が確認したのは98年でした。それから今となっては、東京の街中で最も普通に見られるチョウの一種となってしまいました。
ツマグロヒョウモンの属するヒョウモンチョウの仲間の幼虫はスミレ科を食草(昆虫が餌とする特定の植物)としていますが、ツマグロヒョウモンはパンジーやビオラなどの園芸種が好物。なので、したたかにも生花店などの流通網に乗ってほかの北上種より速い速度で北上を成し遂げたようです。
ヒョウモンチョウの仲間は国内に十数種おり、ほとんどがヒョウ柄ですが、ツマグロヒョウモンの雌のみ前翅(ぜんし=前の羽)の褄(つま=裾の左右両端)が黒く、主に南西諸島以南に生息する有毒のカバマダラというマダラチョウに擬態しているといわれてます。ヒョウモンチョウの仲間は冷涼な地域に生息しているものが多い中、ツマグロヒョウモンのみ亜熱帯に生息するように進化、さらに有毒種を偽って繁栄したのですからその適応能力には恐れ入ります。
ただ、東京あたりでいるはずのないカバマダラを装って、ゆったりと飛ぶ姿は、私から見るととぼけていてつい笑ってしまいます。有毒のマダラチョウは皆それを誇示するがごとく悠々と飛びますが、東京でそれを真似してもカバマダラなど知らない天敵たちの格好の的となるだけです。それでも東京で減る傾向にないのは、逆に南の島での擬態の効果がいかほどのものだったか、疑ってしまいますね。
《NPO自然環境復元協会顧問 小口深志》 |
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