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神戸アメリカ領事館前で(ベトナム戦争への)抗議のゼッケンをかけた子どもたち(個人蔵)
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今から50年前、多くの人々が、日本の政治のあり方や社会のあり方に、次々と問いかけを発し、その解決を求める行動を繰り広げた時代がありました。
戦後の日本は、敗戦後の労働組合運動の高揚、戦前的治安法制復活への反対、日米安保条約の改定反対運動など、節目節目で大きな社会運動を経験してきましたが、1960年代後半というこの時代は、運動の担い手や様式に大きな変化が見られました。
それまでの社会運動は革新政党と労働組合ナショナルセンターが連携し、その指導と組織の動員により、職場からの抗議や街頭デモが展開されてきました。その主張は大きくいえば、戦後の平和を守り生活向上を図ること、特に戦争に巻き込まれず、戦争の被害者にならない、という戦争体験に基づく要求でした。
しかし、急速な経済成長を達成したとき、人々が気付いたのは、当時世界的に注目されていたベトナム戦争は、実は日本各地にある在日米軍基地とそれを支える日本の協力なしに成り立たず、日本は知らぬうちに戦争を仕掛ける拠点、被害者ではなく加害者になっていたことでした。また、自分の住む地域社会に目を転じれば、巨大な石油化学コンビナートの建設、高速道路・鉄道網の整備などにより、生活の基盤を揺るがす激変に見舞われはじめていました。
こうした新しい社会環境のなかで、当時の人々は、上から指示されて抗議の声を発するのではなく、自身で問題を確認し、自らの意志で反戦の声を上げるようになりました。また、生活環境を根こそぎ奪う理不尽な政策決定や人間の生命を犠牲にする生産のあり方に抗議するなど、その「場」でできる行動、あるいは自身の依拠する「場」を変える行動を開始していったのです。
《国立歴史民俗博物館教授 荒川章二》 |
12月10日まで企画展示「1968年」
12月10日(日)まで、国立歴史民俗博物館(千葉県佐倉市、京成線京成佐倉駅徒歩15分)で企画展示「『1968年』—無数の問いの噴出の時代—」が開催中。一般830円。問い合わせは Tel.03・5777・8600 |
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