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「銀箔押張懸兎耳形兜」 国立歴史民俗博物館蔵 |
兜(かぶと)といえば、もちろん戦いの道具。重厚で強そうなものが好まれた、と思いきや、戦国時代の終わりころから「変わり兜」と呼ばれる、奇抜なデザインを競うものが作られました。大規模な合戦が行われるようになり、大軍の中で目立つための意味があったようです。また、「カブキ(傾き)」といわれるような、常識破りの派手な装いや行動をよしとする世相も反映していると思われます。
写真で紹介した兎(うさぎ)の耳をかたどった兜もその一つ。兎をモチーフとした兜は意外に多く、武士が縁起のよい動物と考えていたことがうかがえます。「飛び跳ねる」とか「耳がよい」とか「多産」とか、あるいは信仰の対象である月との深い関係や、大国主(オオクニヌシ)の話(因幡の白兎)など、いろいろと吉祥としての意味があったようで、かわいいから“ウサ耳”にした、というわけではないようです。
この兜は、前立(まえだて)に三日月を付けていますし、色も銀色と白なので、月との関係を特に意識しているようです。かつて上杉謙信が使った兜として、越後国高田藩の藩士の家に伝えられた物です。「耳」の部分は金属ではなく、「張懸(はりかけ)」つまり一種の「張り子」に銀箔(ぎんぱく)を貼ったものですから、見かけほどは重くはありません。
《国立歴史民俗博物館 教授 小島道裕》 |
9月19日まで特集展示
19日(月・祝)まで、国立歴史民俗博物館(千葉県佐倉市、京成線京成佐倉駅徒歩15分)で特集展示「戦国の兜と旗」が開催中。一般420円。Tel.043・486・0123 |
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