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赤絵染付諫鼓鶏香炉(五大陸博物館蔵シーボルト・コレクション) |
シーボルトは、オランダ東インド会社の医師として1823年から1829年まで日本に滞在しました。「シーボルト事件」で国外追放という衝撃的な出来事によっても知られるドイツ人です。彼はいったん帰国した後、1859〜1862年にも来日、はじめはオランダの商事会社の顧問として長崎、その後幕府の顧問として江戸に滞在し、その滞在期間に膨大な数にのぼる日本の文物を収集しました。
この二度目の来日時の収集品は6000点を上回る大規模なもので、現在ミュンヘン五大陸博物館(ドイツ)という国立民族学博物館に収蔵されています。これらは1874年にバイエルン国王により購入され一度は宮廷コレクションとなりますが、その後王政の終焉(えん)を経て、ミュンヘンの国立民族学博物館に移管され現在に至ります。
シーボルトの収集目的は、収集品を西洋人に見せることにより日本文化の本質を客観的に理解させることにありました。さらに、当時西洋では低く見られがちであった非西洋文化への偏見を修正したいという、人道的な思想にも根差していました。
シーボルト・コレクションは、幕末の中・上流層の暮らしの中に息づいてきた物質文化を、さながらタイムカプセルのように切り取り、垣間見ることのできる貴重なものです。それは日本の日用品から、漆器・陶磁器・金工などの工芸品、絵画や地図、書物にまで及びます。日本人の高い教養や文化を示す包括的な内容です。シーボルトは、コレクションを通じて現代日本に生きる私たちに、失われた過去である江戸時代の文化との出合いや感動をもたらしてくれるのです。
《国立歴史民俗博物館 機関研究員 櫻庭美咲》 |
9月4日まで企画展示
9月4日(日)まで、国立歴史民俗博物館(千葉県佐倉市、京成線京成佐倉駅徒歩15分)で企画展示「よみがえれ!シーボルトの日本博物館」が開催中。一般830円。Tel.043・486・0123 |
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