|
©2015 INDIGO FILM, BARBARY FILMS, PATHÉ PRODUCTION, FRANCE 2 CINÉMA, NUMBER 9 FILMS, C -FILMS, FILM4 |
年に一度、世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)が開催されるスイス東部の街、ダボス。ここはかつてサナトリウムが林立する街であったことをご存じでしょうか?
1920年〜30年代にはヨーロッパ各地の結核患者が療養のため同地を訪れています。中にはトーマス・マンの著書「魔の山」の舞台となった施設もありました。
現在では、ほとんどのサナトリウムが療養型の高級ホテルに経営を転換しています。幸いなことに、「魔の山」の舞台となったサナトリウムは今もかつての姿をとどめており、その重厚で美しいホテルの様子は、上映中の映画「グランドフィナーレ」で見ることができます。
この映画の主人公は、引退して高級ホテルに隠居している音楽家。ほかにもハリウッドスターやサッカーの元スーパースター、世界的な映画監督など、そうそうたる宿泊客が登場します。実際、スイスの高級ホテルには世界中からセレブリティーが集います。
私がスイスに住んでいた時、夏のバカンスを過ごしに隣国からやって来る貴族がいました。1カ月分の服や靴などの荷物を2台の車に詰め込み、それらはバトラー(執事)に運転させ、自分たちはもう1台の車でやって来ます。バカンス中はホテルで過ごし、たまに隣の村に行くぐらいで特に何もしません。そしてバカンスが終わると、次の年の予約をして去って行きます。
こんな優雅なホテル暮らしにはなかなか手が届きませんが、ぜひ映画「グランドフィナーレ」でそのぜいたくな空間に触れ、人生を振り返るひとときを持ってみてください。人生は旅です。背負っているものが多い人ほど、休息によって得られるものも多いと思います。
《ホテルジャーナリスト せきねきょうこ》 |
グランドフィナーレ 伊・仏・スイス・英合作
引退した作曲家で指揮者のフレッドのもとに英国女王から出演依頼が舞い込む。かたくなに拒むフレッド。しかしホテルで過ごす日々は彼の心にある変化をもたらす。
監督:パオロ・ソレンティーノ、出演:マイケル・ケインほか。124分。
シネスイッチ銀座(Tel.03・3561・0707)ほかで上映中。 |
|
| |
|