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  ものしりミニ講座 平成26年10月上旬号  
法令の文言が呪文に  文字とまじない

「急急如律令」と書かれた中世の呪符木簡(複製。原品は新潟市文化財センター蔵)
 初めて文字を目にしたとき、人はどんな印象を受けたのでしょうか?

 もともと漢字自体、神と対話するためにつくられたといわれていますが、日本列島に漢字が渡ってきた当初は、その意味するところを理解できる人はごく一部に限られていました。多くの人にとっては、漢字はデザインであり、鏡や刀剣などそれを持つ人の権威を象徴し高めるものであったことでしょう。外国語が書かれたTシャツを格好良いと思うようなものです。そして文字がまじないに使われることもありました。

 その一つに「急急如律令」という言葉があります。もとは中国漢代の法令を下すときの文言で、「早く律令(法律)のごとく行いなさい」という意味でしたが、そこからまじないの文句として使用されるようになり、日本列島に伝わりました。天皇が元旦に神々へ拝礼を行う四方拝のときの呪文にも登場します。また陰陽道(おんみょうどう)や密教・修験道などでも広く用いられています。

 「#」のような記号ももとは中国から伝わってきたものです。本来、「九字」といって、「臨、兵、闘、者、皆、陣(陳)、列、在、前」と唱えつつ指で横、縦、横、縦の順で9回空を切るまじない・記号でしたが、日本では「#」に省略した記号が土器によく墨書されました。ところがこの記号は日本だけではなく、高句麗や百済、新羅でもよく用いられていたことが判明しています。

 東アジアに視野を広げることによって、日本だけを見ていては分からないことも分かってきます。

《国立歴史民俗博物館・小倉慈司》

◆文字がつなぐ—古代の日本列島と朝鮮半島—
 国立歴史民俗博物館(千葉県佐倉市、京成線京成佐倉駅徒歩15分)で15日(水)〜12月14日(日)、国際企画展示「文字がつなぐ—古代の日本列島と朝鮮半島—」が開催される。日本初公開作品も含む約300件の資料と書が一堂に公開。日本と朝鮮半島の交流の歴史を古代文字で読み解く企画展。一般830円。
 Tel.03・5777・8600

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