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医療マッサージの自己負担料安く 療養費の申請で「健保並み」 |
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澤登 拓さん |
関節などの運動機能障害や手足のまひ・むくみ、痛み緩和のために行う医療マッサージ。このマッサージ治療を鍼灸(しんきゅう)治療院や在宅で受けた場合、「療養費の支給」を申請すれば自己負担料が軽くできることはあまり知られていない。長寿化に伴う高齢者人口の増加でマッサージ治療の必要性は高まる一方。健康保険並みの支払いでマッサージ治療を受けるにはどうすればいいのか—。
「現場を訪問すると独居の高齢者や老老介護のケースが非常に増えています」と話すのは、訪問マッサージや鍼灸治療を行う(株)ふれあい在宅マッサージ(本社・港区、TEL.03・6435・3248)を全国27カ所で直営する澤登拓さん(42)。関節の拘縮(こうしゅく)などで寝たきりになると一人で寝返りが打てずに手足がむくんできて、腰痛にもなる。澤登さんによると、80歳の妻が、寝たきりになった90歳の夫を3時間ごとに寝返らせることを何年も続け、疲労困憊(こんぱい)しているケースもあったという。
こんな時に医療マッサージを受けるには、主治医の同意書が必要だ。同意書とは、主治医がこの状態ならマッサージが必要、と判断したいわば証明書。要介護で3〜5の人が多いというが、この同意書があれば在宅マッサージで「交通費(治療院から半径16キロ圏内)込みで施術料は平均1回300〜400円程度」と澤登さん。
こうした医療マッサージができるのは、「あん摩マッサージ指圧師」の国家資格を所持している者だけ。同免許は、高卒者が専門学校で3年間学んだ後、国家試験を受け、合格した者に交付される。
2000年に介護保険制度が導入されてから次第に医療マッサージにも保険が扱えることが広まってきたが、それでも「まだ、十分に知られていない」と澤登さんは話す。保険が使えるのは国家資格が必要な鍼灸治療でも同じ。ちなみに、リフレクソロジーやカイロプラクティック、整体などには国家資格の免許がないという。
「利便性を増すために厚生労働省と話し合うことも多いですよ」と(社)全日本鍼灸マッサージ師会会長の杉田久雄さん |
「療養費の支給の仕組みは、一般的な健康保険とは違います」と(社)全日本鍼灸マッサージ師会会長の杉田久雄さん(69)は話す。病気にかかり健康保険で治療すると、かかった医療費に対し病院の支払い窓口でその3割などを自己負担する。これを「療養の給付」という。一方、医療マッサージを受けた場合は「療養費の支給」と言い、保険請求には所定の書式に記入し保険者(健康保険組合など)に提出することが必要になる。
療養費の支給では、施術を受けた費用はいったん、患者(被保険者)が全額支払い、その後に保険者から70%などが戻ってくるという仕組み。
しかし、認知症や手足が不自由な人の場合、本人が申請書を書けないことも。このため実態は、「療養の給付と同様に被保険者(患者)から健康保険と同じように負担金だけもらって治療院が保険者への申請書を代わりに書いて申請するケースが全体の8割以上ある」と杉田さん。一部には保険者が申請書の代行を認めないこともあるので、事前に保険者に確認すること。なお、治療院によるこうした代行には手数料はかからないという。
「20年後には75歳以上の人口が2010年と比較して約2倍になる(厚生労働省)」と澤登さん。病院で受け入れる患者の数が限られる中、病院より自宅で治療や末期を迎えるケースが増えてくると見通している。
また、杉田さんも、「財政問題から国の健康保険制度が危ぶまれていることもあり、今後、高齢者の自立を促進しようとする動きが強まってくる」と予想。高齢者が高齢者を世話する老老介護や独居高齢者の増加などの中で、療養費によるマッサージ治療は今後、ますます注目されそうだ。 |
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