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「年金のもらい過ぎ」解消へ 社会保険労務士・阿部純二さんに聞く |
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阿部純二さん |
年金生活者に厳しい現実
最近、話題になっているのが、「年金のもらい過ぎ」—。本来、消費者物価指数(CPI)に連動した物価スライド率で支給額を変更することになっている年金(老齢基礎年金)。ただ、これまでは過去にCPIが下がっても“政治的判断”で支給額が据え置かれた経緯がある。しかし、今回の通常国会でこの年金額の特例水準(2.5%)を解消する法案が成立すれば、これまで“もらい過ぎていた年金”が減額されることになる。本来の給付水準に戻ることではあるが、年金生活者にとっては厳しい現実といえそうだ。
これまでの年金の特例水準が解消される前に、今年(平成24年)度の年金も6月振り込み分から前年度比マイナス0.3%に改定、減額される。総務省が発表した23年度のCPIが対前年比マイナス0.3%になったからだ。
年金に詳しい阿部純二さん(社会保険労務士)によると、国民年金保険料を20歳から60歳まで40年間払い込んだ人の年金額は、昨年度の78万8900円から今年度は78万6500円に下がる。また、厚生年金の概算は前年度の支給額×0.997に引き下げられる。
CPIとは、消費者が商品を購入する段階での小売価格を表す指数。物価水準を示す指標の一つとなっており、経済のデフレ状況(物価の下落)が続く日本では下がる傾向が続いている。このCPIの変動に合わせて年金額を改定するのが物価スライド制である。
この物価スライド率で年金支給額を決めることが平成12年度からたびたび据え置かれていた。これが年金の“もらい過ぎ”を生むことになったという。
この背景について阿部さんはこう話す。「11年度支給額まではCPIに連動する物価スライド率で支給額を変更するという原則に基づいて調整されてきました」。それがなぜ、原則通りに調整されなかったのかというと、「当時の参議院選挙で自民党が負けて橋本政権から小渕政権に代わったばかりで、人気と景気を浮揚するために据え置いたから」と阿部さんは解説。
CPIは平成11年度を100として12年度から14年度までに1.7%下がったが、支給額は据え置かれ、「本来の受給水準より1.7%多くもらい過ぎていた」(阿部さん)という。近い将来、景気が回復してCPIも上昇し、1.7%のもらい過ぎが解消され本来の年金支給の水準となるはずだった。しかし、その後もデフレ経済が続いたため、「年金は本来の水準より2.5%多くもらい過ぎになっている」と阿部さん。
「すでに10年間以上もらい過ぎていたのだから、その解消はやむを得ないでしょう」と指摘する。物価が下落したにもかかわらず修正されてこなかった分の年金額を本来の支給に戻す法案が今回の通常国会で成立すると、今年度で0.9%(10月支給分から)、25年度0.8%、26年度0.8%が減額されることになる。
年金受給者にとって痛い減額であるのは間違いない。
問い合わせは、最寄りの年金事務所へ。 |
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