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借金体質、年金…日本はどうなる? 作家・細野真宏さんに聞く |
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「日本はすでに自己責任社会」と細野さん |
昨年、話題となった経済ニュースの一つに、ギリシャの財政危機による世界的な財政不安が注目されたことがある。中でも日本の借金漬けの体質に不安感が広がった。また、年金制度への不安は国内の消費全体に影を落としている。今年も関心を集めそうなこの2つの問題について、作家で予備校講師の細野真宏さん(2008年の社会保障国民会議所得確保・保障分科会委員)に話してもらった。
国の借金は?
昨年2月のギリシャの財政危機表面化をきっかけに世界に金融不安が広がった。中でも、懸念されたのが日本。債務残高が先進諸国でも断トツのため、「日本もギリシャのようになるのか」と連想された。
日本はギリシャと違い国債のほとんどを国内の金融機関が購入しているため、国債価格は安定して推移。財政危機とはまだ縁遠いように見える。しかし、国の借金は今も増加が止まらず、財政が危機的状況に向かっているのは変わらない。
細野さんは、「今後、社会保障費が毎年1兆円ずつ積み上がってきます。それを(国債発行による)借金で賄っていくと借金が増え続けて、いずれは財政破綻が避けられません」と話す。
国の借金は現在800兆円を超える。このままでは1000兆円に達する可能性も高い。借金の総額が膨大な中で怖いのは金利の動き。今は低位で安定している国債の金利だが、1000兆円と仮定して1%上昇すれば年10兆円も利子負担が重くなる。金利が上昇すれば、財政危機に拍車がかかってしまう。
それにしてもなぜ、日本の借金は増え続けるのか。政府の支出に無駄なものが多いからか。細野さんは、「小泉政権の時に、日本は支出削減を積極的に行っており、すでに“小さな政府”になっています」と話す。確かに、OECD諸国の一般政府支出総額(対GDP比、2007年)をみると、日本は40%を下回り、当時の加盟国(30カ国)中、ルクセンブルクやスロバキア並みの24番目。社会保障費も削減されて、医療や介護の現場は悲惨な状況にまでなっている。
細野さんは、「国の借金が増え続けているのは、支出以上に収入が減少しているため」と指摘する。OECD諸国の国民負担率(租税負担率+社会保障負担率)で日本は30%弱と26番目。日本は社会福祉大国ではなく、アメリカ並みの自己責任社会といえる。
細野さんは国の収入が低い一番の原因について「消費税が世界的に見ても低いからです」と話す。
ただ、消費税率を上げると年金生活者の税負担が重くなるといわれている。「社会保障の費用に消費税からの税収を充てるなら消費税率のアップは国民からの理解が得られやすいのでは。これで、医療や介護が増えても国の借金は増えずに済みます」と細野さん。
年金の将来は?
一方、昨年1月から社会保険庁は日本年金機構に、社会保険事務所は年金事務所に変わった。しかし、年金制度に対する国民の不安は依然ぬぐい切れていない。
年金制度が不安視されるのは、(1)日本では少子高齢化が進んでいる、(2)国の年金制度は、現役世代が引退世代を支える仕送り方式—ということが要因とみられる。
しかし、細野さんは「ここが引っ掛かりやすい点」と話す。まず、少子高齢化だが、日本の年金制度は出生率1.26を前提に設計されている。これに対して実際は1.37(09年)ある。
「出生率1.26のまま推移したら2030年には年100万人が減少します。これは和歌山県や香川県の人口に匹敵する数字」と細野さん。100年後には今の3分の1の人口になるくらい厳しめの数字で年金制度は設計されているという。
また、経済成長率も0.8%が年金制度の前提。「日本の潜在成長率(実質)は1〜2%あるといわれており、これもかなり厳しめ」と細野さんはいう。
それ以前に、年金積立金が200兆円あり、受け取る人が増えてくるこれからは、この年金積立金と現役世代の保険料で2分の1、あとの半分を税金で賄う構図。日本の年金制度はかなりしっかりした設計をしているというわけだ。
細野さんは、「年金制度の破綻論は政治の道具として使われてきたと思います。ニュースの本質を正確につかむためには順を追って考えることと、分かったつもりにならないことが大切です」とアドバイスする。 |
(文藝春秋・1260円) |
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