「日本で覚えた肉じゃがを父に作って食べさせたい」というミーさん(真ん中)を囲んで、村田弘顕・優子さん夫婦と孫の本郷真帆さん(11)
留学生受け入れ
「定年退職後も年金だけに頼れない」ということか、最近「副収入」の道を探る年金生活者の動きが目立つ。ある留学支援会社が開始した団塊世代以上の世帯を対象とした有償ホームステイ募集に多くの希望者が集まる一方、年金生活者がネットオークションで自宅にあるビンテージ物を高く売却する―。少子高齢化の進展で公的年金制度に不安感が強まっているのが背景だ。
文化の“講師料”も
JR船橋駅からバスで20分の住宅地に住む村田弘顕さん(70)と優子さん(65)は、これまで120人以上の留学生を受け入れてきた夫婦。取材の日には米国女性のミーさん(20)=ニューヨーク在住、大学3年生=が滞在中だった。「25年前に朝日新聞に載ったホームステイ募集に応募したのがきっかけでした」と優子さん。受け入れたのはオーストラリアからが多く、あとは米国、カナダ、ドイツ、ニュージーランド、フィンランド、中国などさまざま。
互いに異文化楽しむ
「われわれは英会話など外国文化の勉強になりますし、留学生は日本の言葉や文化について学べる。ホームステイとは異文化を楽しむ心の交流なんです」と弘顕さん。とはいっても、生活習慣の違う国から来た留学生と、時には1年近くも住まいを共にするだけに何かとあつれきもある。「うまくいく秘けつは遠慮せず素直にぶつけること。シャワーの時間とかあいさつの仕方など最初にきちんと話しておけば、後は余計な気遣いをしないで済みます」と優子さん。
ホームステイで国際交流を続けてきた今、村田さん夫妻は世話をした留学生の縁でニューヨークにホームステイしてゴルフを楽しんだほか、オーストラリアのパースに旅行した際、かつての留学生が遠路はるばる訪ねてくれ感激したことも…。
留学支援会社が紹介
今回、村田さん夫妻に留学生ミーさんを紹介したのは留学支援会社のサクシーオ(本社・東京、問い合わせは TEL:0120-34-3940)。同社は、団塊世代が定年退職後に収入源となる外国人留学生を受け入れるホームステイプログラム「Homestay in JAPAN !! 60」をことし3月に始めた。同プログラムにはこれまで500件を超えるホストファミリーの登録があるという。
留学生を受け入れる家庭には、同社から1日2000円(朝食、夕食代含む)が支払われ、例えば1カ月間だと6万円になる。また、ホストファミリー登録者で日本語教師、教員免許などの資格を所有し、日本語、習字、生け花、茶道など日本文化に関することを教える場合は、1時間当たり1000円〜3000円が支払われる「OKEIKOプログラム」がある。このOKEIKOプログラムを活用すれば1カ月で約10万円の収入になるという。
ネットオークション
自分のコレクション販売
一方、中高年齢者もインターネットを積極的に活用する動きが出てきた。「最近、ネットオークションでお金を稼ぐ中高年者が増えています」と話すのは、確定申告ソフトを作るキューブシー社長の及川満広さん(51)。及川さんによると、団塊世代は自分の趣味を大切にしているため、例えばビンテージ物のジーンズを所持していたり、司馬遼太郎の初版本をそろえるなど“価値”の高い物を所有していることが多いという。こうした自宅のコレクションをネットオークションに出して年に20万円以上稼ぐ人もいるようだ。
年間20万円以上の収入をネットオークションで得ていると税務署に確定申告が必要なため、税務署でもネットオークションの動向に注目しているようだ。
金融広報中央委員会「家計の金融資産に関する世論調査」(08年度、主に60歳以上を対象)によると、退職後における生活資金源を「公的年金」と考えている人は78.1%でもっとも多い。だが、急速な少子高齢化の進展で「退職後の日常生活費を年金(公的年金・企業年金)で賄えない」と予想する人も48.5%となっており、定年退職後の生活不安感は強い。このため中高年の間で、何らかの副収入を得ることに関心が高まっている。