|
|
声掛けで“男の職場”柔らかに 女性社長・亀山郁子さん |
|
|
|
実家が農家だったという亀山さん。若い頃から、「勤め人ではなく、自分で何かやってみたいと思っていた」と言う |
建設現場や警備という“男の職場”を兼ねている亀山郁子さん(71)=(株)三協、三陽警備(株)社長。かつてけんかが絶えなかったという男たちをうまくまとめるコツは、「声を掛けてあげること。すると彼らも心を開いてくれる」とにこやかに話す。しかし、過去には難病にかかって3回も手術する一方、警備会社の設立直後に夫が亡くなるなど、山あり谷ありの人生を歩んできた。そんな危機を亀山さんはどうやって乗り切ってきたのか。
土木建築現場を請け負って作業員を派遣する事業の(株)三協と、イベント施設や交通・雑踏などに警備員を派遣する三陽警備(株)(両社所在地は千葉市稲毛区)の社長を務める亀山さん。そこで働く社員約150人から“母親のように”慕われている。
社員には朝夕どきにあいさつを交わしつつ、「人は一人では生きられないのよ」「みんなで助け合うことが大切ですよ」とよく話し掛けるという亀山さん。社員はほとんどが独身男性。その一人一人に声を掛けることで、孤独感からすさみがちな心も和み、社員同士のいさかいはほとんど見られないという。
一般的に社員の定着率は良くない業界だが、「私の会社には20年以上働いている人が数人います」と亀山さん。定着率の良さが自慢だ。
亀山さんが経営者として最も苦しかったのは、それまで二人三脚で事業を担ってきた夫が他界した2001年ごろ。ちょうど警備事業に参入しようと三陽警備を立ち上げたばかりで、会社の事務所を開いて間もなくのことだった。
体が弱かった夫はそれまでも入退院を繰り返していたが、亡くなっていざ自分が警備事業を引き継いでみると一から事業を始めるという段階だった。それまで夫の仕事を支えてきた亀山さん。建設に関しては業界の事情もよく分かっていたが、警備については何も分からず、協力してもらうために業界関係者のところへ「頭を下げて回りました」と亀山さんは振り返る。
「快適な生活ができる環境を」という気持ちから社員寮を建設した |
3度の手術を経験
悪いことは重なるものでその頃、亀山さんは頸椎腫瘍(けいついしゅよう)にかかる。病院で「1000人に1人の珍しい病気」と診断され3回の手術を行うことに—。手術時間は1回目が18時間、2回目、3回目は各7時間にも及んだ。手術後は身動き一つできなかったが、亀山さんはそんな状態でも、「少しは休みなさいということなんだな」と前向きに解釈したという。それと同時に、事業を進めていくには社員など関係者全員の協力が必要ということを痛感した。退院後、仕事に戻った亀山さんはそれまで以上に社員同士の融和を図ることに注力し、三協は設立から25年、三陽警備も15年経過している。
亀山さんは手術から約10年後、社員への恩返しという気持ちを込めて冷暖房、テレビ、冷蔵庫、クローゼットを完備した部屋数160室の寮と事務所を建築した。劣悪な作業員宿舎が多い業界にあって、いち早く快適に生活できる住環境を整備した。「社員は家族。社長も社員も人はみんな平等なんだよと話しています」と亀山さん。そんな人柄だからこそ、社員の絆は強い。
三陽警備(株)Tel.043・250・6125 |
| |
|